Case, ジークフリート
バレンタインデーでは多くの若者が愛を伝えあったり、日頃の感謝を述べたりする。
俺、アイシェン・アンダードッグは後者だ。一人じゃ何もできない自分についてきてくれる仲間たちに感謝を伝えるため、プレゼントを用意した。
俺は今、ジークフリートといううちの騎士団の参謀のいる部屋を訪れた。
――コンコン。
「ジーク、いるか?」
「アイシェンくん?良いよ、鍵は開いてる」
「よっ、仕事お疲れさま」
「どうも。団長が使えないと、私に仕事がたくさん回ってくるから大変よ」
「あー……それは申し訳ない。一応頑張って仕事覚えてるから!!」
「何かの要請書に、許可のサインをするくらいだけどね。重要書類とかは私がやってるじゃない」
「重ね重ねすまないな……」
「……なーんて。良いよ、気にしなくて。私が好きでやってるんだし、アイシェンくんは机上より、戦場の方が輝いてるもんね」
「そう言ってもらえるとありがたいよ。突然だけど、はいこれ」
「これは……チョコレートケーキ?しかも手作りだ」
「今日はバレンタインデーだろ?日頃の感謝として良いかもなって」
「へぇ……シントウでもバレンタインの文化ってあるんだ」
「そこら辺よくわからないんだよなぁ。宗教違うくせにクリスマスなんかもあるよ。まるで誰かが適当に混ぜたみたいだ」
「意外とそういうのも調べると面白いかもね。さて、と……私も何かお返しをしなきゃだ」
「別にいいよ。俺が日頃の感謝として送りたいなって思ってやったんだから」
「そういうわけにもいかないわ。そうね……これなんてどう?」
ジークフリートが渡してきたのは、一本の万年筆。しかも新品だ。
「使ったことの無い人でも使いやすいようカスタマイズされてる。インク漏れ、破損を防ぐために一つ一つの素材を厳選、インクにもこだわりがあって、ペン先のデザインも有名なデザイナーが……アイシェンくん?ボーッとしてどうしたの?」
「あ、いや……すごく豪華だなって。俺なんかには勿体無いくらい」
ここまで細かく説明をしてくれる、そして話を聞く限り恐らくこれは――。
「アイシェンくんはリーダーなの。リーダーはリーダーらしく、良いものを使えば格好もつく。それに、アイシェンくんは文字が綺麗だし」
「まぁ、習字はサン先生に無理矢理習わされたから」
「……それで仕事、頑張ってね」
耳をほんのりと赤く染め、ジークフリートは笑みを浮かべつつ手を振った。
俺は一言お礼を言って、その場を去る。
「……頑張ろっ」
***
~高級特製万年筆~
ジークフリートからのお返し。
一つ一つの素材、仕様が入念にカスタマイズされており、使ったことの無い人でも使いやすい逸品となっている。
また、彼女の詳しすぎる説明と使われた形跡の無い筆から察するに、これをオーダーしたのはジークフリート。そしてプレゼントのために用意していた。
恥ずかしがり屋の彼女のために、何も言わず大事に使わせてもらおう。
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