甘いチョコに罪はない。

Kojitomo

甘いチョコに罪はない。

 すべてはコロナウイルスが悪い。

 バレンタインもあるし、手作りのカップケーキ作ったんだ。お菓子は娘と一緒に作る。彼女に混ぜてもらおうと思ったのに、思いの外興味なしだった。

 しかし私にはホットケーキミックスという強い見方がいる。あれは材料と混ぜればなんとかなるのだ。バターを入れればコクが出るし、砂糖を入れれば甘くなる。玉子を入れれば膨らむし。よりおいしくしたければ、ふるいにかけてダマをなくせばいい。材料を入れる順番も守ればいい。

 でも、でも基本的に混ぜればいい。そして、あればオーブンで温度設定して焼けばいいだけ。オーブンなければアルミホイルで包んでトースターで焼けばいい。熱が通って膨らめば完成するのだ。


 でも、でも、いまはコロナウイルスが蔓延している世知辛い世の中。まさにコロナ禍。わざわいがザップーンと波に乗って私たちのすぐ横まで迫ってきている。娘がひまぶっこいているのは、クラスターが出た保育園が休園期間に入ったからだ。誰がかかってもおかしくない世界。正直、戦々恐々。


 作ってから、気づいたのですよ。冷ましてカップケーキをひとつずつラップに包んで、思い付いてしまったですよ。

 誰かが作ったお菓子ですら、怖いと思う人もいるかもしれないと。


 作ったお菓子を袋に入れて、鞄に入れたけれど、

 血の気が離岸流のように迷いのなかで確実に引いていくのがわかった。一旦、ふとんに入ったけれど、私は鞄からお菓子たちをリビングのテーブルの上に置いた。甘いお菓子たちに罪はない。おうちでおいしくいただこう。


 ウイルスがなくなることはない。もっとひどい状況になるかもしれない。それでも、誰かに遠慮なく料理を作れる世界がまた戻ってくることを祈ってならない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

甘いチョコに罪はない。 Kojitomo @kojitomo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ