第22話 保健室でのひと時
森川くんが保健室を出て行ってからのこと。
「あ、あの牧先生。」
「さ、邪魔者は消えたし、ちょっと話しようか。」
牧先生が紅茶を淹れて持ってきてくれた。
「は。はい。」
「いやー、最近、秋次くんに女の子がいるって聞いていたんだけど、結城さんだったのね」
「え?いや、そう言う関係じゃないです…と、友達です。」
友達だと思う…友達だと思ってくれているのだろうか。でも、友達…わからない。
「じゃ、先生が秋次くん、もらっていい?」
「ダメです!あの!それはお、おかしいと思います…」
一瞬、自分の感情がコントロールできず、大きな声になってしまった。
「冗談よ。そんなに怒らないで。ちゃんと話すから」
「牧先生、わざとですね!」
永遠は、取られたくないと思ってしまう。もし、私じゃない誰かが…って考えるだけで落ち着かない自分がいた。
「ふふ、だってあなた、私が秋次くんって言った時から目が本気だったんだもの」
「うー。いじわるですね…」
「私ね、秋次くんのお母さんと友だちだったのよ。秋次くんの事は小さい頃から知っていてね。」
「そ、そうなんですね…。それじゃ森川くんのお母さんってもう」
だから、お弁当も自分で作っているのかな。今は誰と住んでいるのかな。
「そうね。詳しくは本人から聞きなさいな。ともかく、そう言うこと。」
「は、はい。ありがとうございます。」
「それで、好きなの?」
「そ、それは…。まだ全然、遠い感じがしてます。さっきだって…」
永遠は、これまでの出来事を牧先生に全て話した。
「そう、なるほどね。」
「は、はい。私に興味ないのかなーって」
「うーん、秋次くんは…そうね…」
「あの…」
「結城さんは、秋次くんとどうなりたいのかしら?」
「私は…」
「ふふ、難しいよね。ゆっくり考えてみて。今一つだけ言えるのは結城さんが諦めない限り、この話は続くはずよ。」
「それはどういう意味ですか?」
「とにかく、結城さんなりに頑張ってみて?そして結城さんの答えが出たら教えてね。」
「は、はい。」
「結城さんなら秋次くんを…」
「牧先生?なんですか?」
「とにかく信じてあげてほしいかな」
「は、はい!」
牧先生が何を言ったかはわからなかったけど、最後の信じてほしいと言うのはなんとなく分かる。彼は不器用なだけで、不良じゃない。そして、悪いことはしていない。誤解されているだけな気がするから。
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