第21話 まったくなんなんだ
「あら、いらっしゃい。」
永遠がノックしてから保健室に入ると保健の牧先生が迎えてくれた。優しくて話を聞いてくれることもあって生徒からも信頼がある。また女子の中でも牧先生みたいになりたいと言うくらいにスタイルもよく、男子からも人気がある。
「どうも。」
「今日も喧嘩?秋次くん?」
「違うし」
「あら?結城さんも一緒?」
「あ、はい。あの…体育祭の準備物の確認していた時に上から物が落ちてきて森川くんが怪我しちゃって。」
「あら、今日も人助け?」
「さぁね。」
「あの、頭を怪我したみたいで…」
なんだろう。二人の関係が気になって仕方がない。
「どれ、ちょっと見せて。」
「あぁ。」
「結城さんもそこに座りなさいな。秋次くんはいつも何かやらかしては怪我してきたりするのよ。」
「そ、そうなんですね。」
森川くんは普段、一体どこでなにをやっているのだろう。牧先生は知っているのかな。
「そこそこやられているわね。」
「マジかよ。そこそこなのか…」
「結城さん、そこの消毒取ってもらえる?」
「あ、はい。わかりました。」
あれ、これって妬いてるのかな。永遠は自分の感情を理解するのに時間がかかった。でも、相手は先生なんだからそれはないはずだと思いたい。
「秋次くん、痛いよ〜」
「いてぇ…」
「結城さんは秋次くんと仲良いの?」
「えっと…多分、はい。でも、自信は、ない、です。」
「そっかー。よしよし、もう治った。」
バシバシと牧先生が森川くんの背中を叩く。
「おい…」
「秋次くんはもう行ってよし」
そう牧先生が言うと保健室の外へ押し出してしまった。
まったく、なんなんだ。
廊下に出されてしまい、秋次は仕方ないから倉庫に戻り確認を続けることにした。
「仕方ねーな」
記録用紙に記録をつけていった。
「こんなもんか。」
そうして倉庫の外へ出るとバットを持った柄の悪い連中がいた。
「あ?」
「まじ、まじめに何やってんの?」
リーダーらしき奴がゲラゲラ笑う。
「お前が2年の森川だな?」
「人違いだろ」
なんでわざわざ聞くのだろうか。はいそうですって答える奴がいるのだろうか、頭大丈夫なのか。
「いやいや、違わねーよ」
「だったら聞くなよ。」
「まぁてめーに恨みはないが、やられてくれや。」
それと同時にバットで殴りかかってきた。秋次は、避けながら状況を考える。
相手は6人だ。内3人はバットを持っている。バットの使い方を知らないくそ野郎だ。
どうやら、喧嘩する方法も多少は知っているようで、素手の3人が掴みかかってきて、押さえたところをバットで殴る戦法らしい。
「相手をしてやるが、俺が勝ったら全部話してもらうからな。」
「バカだな!勝てる訳ねーだろ?」
だったらなんで、今も余裕で喋れているのやら、少しは頭を使えと言いたい。
戦闘力で言えばリーダー含めバット持ちは大した事はない。リーチはあるが、縦横程度で攻撃が単調過ぎる。一方、素手で捕まえようと絡んでくる方が面倒だ。取っ組み合ってはバットの餌食になるからだ。
「なんで当たんねーんだよ。」
「バカだからだろ。」
「お前ら抑え込めよ」
「はぁ…そろそろ反撃するからな。」
秋次はまずバットで攻撃してきた一人を躱してからガラ空きの背中に蹴りを入れて吹っ飛ばす。
間髪入れずに飛び掛かってきた素手野郎を躱してからリーダーに接近しバットを奪い、溝落ちにバットをねじ込んでダウさせた。
後は簡単だ。リーダーを失い、バットも手に入れた秋次に勝てるはずもなく…
「も、う、やめて…」
地面にはそれなりにボコボコになった柄の悪い連中が倒れていた。
「んで、誰の指示だ?」
「し、しらねぇ…」
「はぁ…バット、ケツに差し込んでやろうか」
「ちょ…し、知らないんだ…マジで…」
「じゃあ…遠慮なく」
秋次はリーダーのズボンに手を掛ける。
「わ、わかった…これだよ…」
スマホを見せてきたので、確認するとLineの画面だった。Lineって最近知ったな…。
「死神だ?誰だよ」
「知らない…だけどこれに3万くれるって」
「マジかよ。3万の為に痛い目に遭ってんのか、お前ら。しかも負けて結局は0円か。ボランティアしろや。」
「す、すんません…」
「はぁ…さっさと失せろ。」
「お、ぃ、スマホ…」
「は?ケツに…」
「さしあげます…」
「だよな。」
秋次は興味を失って、倉庫の記録用紙を持って結城のところに向かった。
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