第16話 頑張るとするか

永遠は昼休みに森川くんの所に向かう。

お昼は一人で食べていることが多いから、声をかけるにはちょうどよかった。


「森川くん、ちょっと話せるかな?」

「ん?なんだよ?」

「実行委員のことなんだけど…」

「あ、ああ。どした?」

「実行委員やめないよね?」

「ま、やることになっちまったしな」

不安になるのも分かる。一度はやめようとしていたのだから。

「よかったー。」

「あー。なんだ。悪かったな。」

結城があの場を納めてくれて助かった。だからこそ、やめることはしたくなかったし、逃げるのは嫌だからな。

「あ、うん。私いつもやってたりするから」

「そうか。優等生は大変だな」

「そんな事言わないでよ。私も私で大変なんだよ?」

「そうか…。大変か」

確かに色々頼まれているのは側から見ていても分かる。優等生は成績もそうだが、学校での行動も評価されている。教師も周りもあの人ならやってくれるだろうという勝手な期待も生まれる。好きでやるならいいだろうが、そういう期待でやらざるを得ない、やらなきゃいけないと思ってしまうと、それは苦でしかないだろう。


「うん。でも、今回は、…と実行委員やりたかったからかな」

「あ?」

なにか言ったような気がしたが聞こえなかった。

「とにかくさ!これから色々やらなきゃいけないことあるから一緒に頑張ろう」

「わーったよ。よくわかんねーからなんでも言ってくれ」

「うん、とりあえず先生から資料もらったから、一緒に確認してほしいな」

「おう。」

それから、昨年の資料を確認していき今後、実行委員で集まることも確認できた。内容としては、学校で例年やっている競技と学年で内容を考えてやる競技がある。例年やっている競技について、準備物さえ確認できればいいらしい。学年で内容を考えてやる競技は、それぞれクラスで内容を出して投票してひとつの競技を決め、各学年1競技、3競技行う。その意見集約を行う。そして、実行委員は当日、プログラム進行や得点計算、競技準備など行うらしい。

「んだこりゃ、めんどくせぇな…」

「だから、大変なんだよ?」

「優等生にはなりたくないな」

「森川くんって割と真反対側だもんね」

「うるせぇ」

「一緒に頑張ろうよ」

「へいへい。」

やると決めた以上、やるしかないからな。

「そう言えばさ、森川くんってお昼はどうしているの?」

「ああ?」

「だれかと食べてるのかなーって」

「ああ。一人で食ってるよ。」

「じゃ、も、森川くん、よかったら今度、お昼一緒にどうかな。沙希も居るしさ」

「なんで?」

「一人でご飯はつまんないかなって」

「別にいいよ」

「あ、やっぱりダメだよね!ごめん。余計だった。」

「あ?ああ。」

「これからよろしくね」

「ああ、またな」

少し残念そうな結城の後ろ姿を見て、呼び止めるか悩んだが、その後すぐに午後の授業が始まってしまいうまくいかなかった。

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