なな
「意思疎通出来るモノの怪は拙者も初めて見た。故に他のモノの怪との相違点を洗い出し、更にテディー殿を解剖してどんな感情がテディー殿の原動力になっているかを明らかにしたい。だからこそテディー殿、拙者に解剖させていただきたい。」
ぼ、ぼぼぼ僕知ってるよ。ひひひ瞳ちゃんと一緒にどらま、とか言うやつを見て、そこで人をめす?とか言う刃物を使ってお腹を切ってたんだ! それがかいぼーとか言うやつなんでしょ!?
僕はぬいぐるみだけど、それでもかいぼーされるのは嫌!!
「僕怖いっ!」
「そうねぇ……」
僕が怯えているのを、春子さんは分かってくれたみたい。良かった、とホッと胸を撫で下ろしていたら、春子さんは顔を曇らせた。
「でもテディー、申し訳ないんだけど……私達が所属しているとこの方針が『モノの怪を見つけたら何が何でも消せ』なのよね。」
「えっ、僕消されるの!?」
全然落ち着いちゃいけない状況だった。えええ、嘘でしょ!? せっかく動けるようになったのに、すぐ消されちゃう!?
「あのね、テディー。普通モノの怪はこんな風に意思疎通なんて出来ないし、ただただ暴れ回って人や物なんて関係なく壊す厄災みたいなもの、という認識なのよ。だからとにかく消せ、なんて方針が出ているの。」
「う、うん……」
「だからその方針を守るなら、テディーを消さなければならない。でも……」
「でも?」
春子さんの目がまつ毛で曇ったのが見えた。
「あなたからは怒りを感じない。人や物に害が及ぶようには到底思えないのよ。」
「……それなら春子殿、どう致す?」
「ふーむ……そうねぇ……」
そう言って春子さんは少しの間考え込み、よし、と何かを決めたようだった。
「テディー、あなたは解剖はされたくないと言ったわね?」
「うん。」
「じゃあ、『観察』ならいいかしら?」
「観察?」
「そう。定期的に私達と会ってお話をする。それくらいなら出来るんじゃなくて?」
お話する……。それくらいなら僕にも出来るかもしれない!
それなら協力するよ、と僕が言おうとしたら、その前に九重が声を荒げる。
「春子殿! それではモノの怪を野放しにしたと上から厳重注意されるのでは!?」
僕はその声にびっくりしちゃって二人のやり取りを黙って聞いてみることにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます