第3話 オンラインゲーム プロローグ3
ここで、数年間のオンラインゲーム経験で得た俺なりのネカマのレベルを公開しよう。
まずネカマプレイを始めたばかりのネカマ素人だと、些細なことですぐにバレる。女子高生だの女子大生などと吹聴するが故に矛盾が生じる。知らないことを聞かれ、答えられず撃沈が落ちだ。
次にネカマ初心者に昇格すると、少しくらいの取り巻きが居たりで余裕もあるが、これも些細なことで本性がバレる。男が出る。つまり〝地〟が出てしまう。自分の一人称がブレまくったり、エロ話に耐えられなくなり参加してしまったり。
そしてネカマ中級者になると、周りをしっかりと固めてくる。が、それでも中級者なので、ボロは簡単なことで出てくる。
例えば、嗜好品の専門的な会話に我慢できなくなって入ってくる。車、プラモデルなど、男子が好む嗜好品への愛が深いほど、ボロが出やすい〈最近ではその界隈で女子オタクも多数存在していて、自身の趣味がオタクチックな物でも公表しがちなのでその見極めも苦労するだろうが……〉。
この〝俺なりのネカマレベル〟の中でのネカマ素人から初心者は、自分以外のネカマちゃんが実際に女子かも〈ネカマ上級者を女子と勘違いすることも含む〉と分かると無口になり、静かにフェイドアウトするか手のひらを返し『私は実は男なんだ』だのと、ここでこっそりと自分の性別をバラす。
性別からの脱皮を試みたものの、自身の一人称がまだ〝私〟なのはご愛嬌だ。
この辺りのネカマ男子はほぼ直結奴〈相手が女子だった場合、良からぬことを目論み、即実行しようとする者の呼び名〉なので、貞操観念が崩壊している者同士にはうってつけだろう。
中級者は何パターンかあって、距離を置きにかかる者や、そのまま元気にネカマを続行する者も居る〈彼らはほぼ無害〉。
前者の距離を置きにかかる者の理由は二つ『このまま近くに居たら自分の性別がバレるから男に戻るかどうするか迷う』と『ライバルだった奴が先輩(女)だったビックリ動揺……でもネカマ続けたい、だから理由もなく実は女だった奴は嫌いムカつく』。
そして後者の元気に続行するネカマは、前者の二つの理由を持ちながら虎視眈々と上級者にレベルアップする機会を伺っているのだ。
そしてここからが超絶に厄介なネカマと言っても良いだろう……種族、上級者ネカマ。俺自身はここに属するランクだと考えている。ということで、上級者同士だと普通に水面下の戦いが繰り広げられている。
『今日はスイーツを食べた』『可愛い服を見つけた』などは当たり前の伏線でSNSなども駆使する者もいる。
上級者はその範囲の中に低レベルから高レベルまでいるのだが、この時の俺のレベルは高レベルに足をかけたぐらいだった。
しかし、その時の俺は他の上級者と対等に渡り合える自身はあった。
番外として初心者、上級者問わず、初めはネカマプレイヤーになるつもりは無かった者も居る。
いつの間にか女性認定を受けていて、優しくされたりチヤホヤされたりしているうちに、自然とそうなっていった者を俺は〝成り上がりネカマ〟と呼んでいる。
最初は良いが、感覚的に不戦勝感が否めないので強烈な罪悪感に苛まれる日々をおくっている。
実際、俺自身も成り上がりネカマだった。いつの間にか女子認定を受けていたことで〈もちろん悪気は無いが〉そのままネカマライフの虜となった悪女〈悪ネカマ〉なのだ。
(レモン)【今日は仕事の帰り道に良さそうなカフェが出来ててさ】
(他プレイヤー達)【おお!】【ふむふむ】【それでどうした?】
と、大半が好意的に質問してきたり返信をくれるが、ここに割って入る嫌な奴それが、ライバルネカマのモエちゃんだ。大概のネカマは、ライバルネカマの会話に同調して加わるか、無視を決め込み相手をしてこない。しかし奴は違うのだ。
(モエ)【うちもめっちゃ可愛い店を発見してさ〜】
(他プレイヤー達)【おおお】【それでそれで】【ふむ】
明らかにこちらの会話にぶつけてくる。敢えてそうしてくるのだ。
その上、取り巻きを手中に収めているだけに隙を見せるとズケズケと侵入してくる。だが、こっちだって黙ってはいない。モエちゃんに取って代わられた話題にズケズケと入り返す。
やるかやられるかはあなた次第なのである。
モエちゃんのネカマプレイだけに関して言えば、普通に上級者ネカマなだけなのだ。俺にとっては厄介で煩い存在と感じるのは、何かにつけて俺の関わった案件に入ってくるのが要因だろう。ことあるごとに俺をハブる。その上、見てるのが恥ずかしいくらい凄すぎる姫ちゃんプレイ〈構ってちゃん、甘え上手、貢がせ上手なプレイをするプレイヤーのこと〉ぶりで、パイセンからも忌み嫌われる存在なのは言うまでもない。
ある時こんなことが起きた。
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