ネカマが転じて女子となす

幸 ニ太郎(さいわい にたろう)

第1話 オンラインゲーム プロローグ

[オンラインゲーム]


『またゲームなの? いい加減にしてよ』


「うんごめん……じゃ、時間ないんで切るよ」


『ちょっと待っ……』


 最近、週に一度は彼女の瑠璃るりと電話で同じやりとりをする。彼女の言いたいことも理解できるのだが、俺にとってそれすら無駄な時間なのだ。


 俺の日課的仕事……と言ってもゲームなのだが、これだけはやめられない。そのゲームというのが〝オンラインゲーム〟で、学生の時からハマっている。


 オンラインゲームと言っても数十種類のジャンルがあり、その内容や世界観、プレイスタイルは千差万別だ。


 俺はその中でも絶対にこれだと決めているジャンルがある。〝MMOオンラインゲーム〟中身はファンタジー系。


 この種類のオンラインゲームは、数千人もしくは数万人などの規模の人間が、ヴァーチャルな空間〈コンピューターグラフィックス舞台の〉で構成された世界を自由に行き来して、チャットなどで交流を持ちながら、強いアイテムを手に入れて自分のキャラクターを高みへと上げて行く。


 基本的に自分の分身であるキャラクターを成長させて自己満足していくゲームとなっている。


 と言っても、ただ自己満足に浸るわけではない。十代の時に初めて出会い、その頃から少し前まではニート宜しくだった俺にとっては、その時の唯一のコミュケーションツールとも言えた。


 父親の半強制的な意向もあり、幼少期から十代までの期間、格闘技を習わされていたこと以外、自主的に何かに打ち込むことのなかった俺にとって初めての団体競技〈オンラインゲームということで団体〉。とは呼べずとも、孤独な子供時代と比べれば、良くも悪くも劇的な生活の変化だ。


 ログイン〈ネット回線を通じてゲームに自キャラクターを出現させる。所謂、ある種の異世界転生の完了を告げる言葉〉してゲーム内の仲間達に軽く挨拶をする。


 そしてゲームが始まるのだ。

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