魔王令嬢、勇者令嬢とユリラブして子供できたら即処刑

赤木入伽

第1話 夜の決闘

「我は冥界神の名代なり、天を破壊せむ戦斧なり――、幽世の聖火ラーデス・アニア!!」


「正義の光、気高き輝き、すべての怨嗟を浄化せよ――、曙光真英剣アースディティ!!」


 夜、学校の屋上に二人の女子生徒がいた。


 だがそんなところで、そんな時間に二人が成していたのは戦争そのものであり、今まさに最終局面であった。


 少女二人は早口で呪文を唱えると、魔力の咆哮とともに稲光が閃いた。


 そして、それが三時間に及ぶ勝負の決着だった。


 勝利したのは青い髪をした少女だったが、剣を杖にしなければ立つのもやっとという様子で、息も絶え絶えだった。


 だが一方で、負けたほうの赤い髪の少女はと言えば、


「……まさか親子連続で負けちまうとはなぁ。なんてザマだ……」


 そう吐き捨てながら、しかし笑顔で倒れ込んだ。


 しかも青髪の少女を見やると、さらに笑みを強めて言った。


「どうした? てめぇも笑えよ。てめぇは魔王の娘を討ち取ったんだぜ? なぁ、勇者の娘……」


 赤髪の少女――魔王の娘は、最後の挑発のつもりだったが、青髪の少女――勇者の娘は荒い息をするばかりだった。


「ふん、愛想のねぇやつ……。けど、てめぇの顔って改めて見ると本当に美人だな……。こういうやつにやられるなら、まあ、悪くねえ」


 魔王の娘が言うと、勇者の娘はやっと少し照れたような顔をした。


「ははっ……。褒められるのは慣れてねえか? ……だが、それもおしまいだ。後は煮るなり焼くなり、拷問したって構わねえ……。好きにしな……」


 魔王の娘は言うと、静かに目を閉じ、口を閉じた。


 覚悟はできていたから……。


 しかし、ところが、


「……え? 今、好きにしていいって、おっしゃいましたよね?」


 勇者の娘は言うや否や、魔王の娘の「あ、ちょっと待て」というセリフを無視して、疾風のごとき手際の良さで魔王の娘を抱えあげると、そのまま脱兎のごとく走り出して屋上を後にして――


 ――――翌朝、決闘があった屋上のすぐ下の教室でのこと。


 魔王の娘と勇者の娘がともに横になっていた。


 いや、横になっていたというか、重なり合っていた。


 ブレザーもスカートもシャツもブラもショーツも脱ぎ散らかして、重なり合っていた。


 すべてを脱ぎ散らかして裸になって、重なり合っていた。


 魔王の娘と、勇者の娘が、裸で、重なり合って、一夜を明かしていた。

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