バレンタイン短編集2022

無月兄

そのチョコは誰から?

 学校に着いたら、すぐにシュウちゃんにチョコをわたそう。

 そう思ってたけど、見ちゃったんだ。シュウちゃんが、ラッピングされたチョコレートを持って笑ってるのを。


 誰からもらったの? そんなに大事そうにして、もしかして好きな子から?


 すっごくモヤモヤして、結局チョコをわたすどころか、まともに話しかけることもできないまま、放課後になっちゃった。


 帰り道。鞄の中には、シュウちゃんにあげるはずだったチョコがまだ入ってる。

 せっかくのバレンタイン。このまま終わっちゃうのかな。だけど、こんな気持ちじゃわたせない。


 その時、後ろからわたしを呼ぶ声がした。


「まってー!」

「えっ、シュウちゃん?」


 振り返ると、シュウちゃんが息を切らせながら、こっちに向かってかけてきた。

 よっぽど急いで走ったのか、なんだか顔が赤くなってる。


「な、なに?」

「わたしたいものがあるんだ。はい、これ!」

「これって……」


 それは、今朝シュウちゃんが持ってたチョコレートだった。


「バレンタインチョコ。男からわたすから、逆チョコって言うのかな」


 逆チョコ!?

 それじゃ、これって誰からからもらったんじゃなくて、わたしにくれるつもりだったの?


「受け取ってくれる?」


 そう言ったシュウちゃんは、さっきまでよりも、もっと顔を赤くしている。

 だけど多分、わたしも同じくらい赤くなってると思う。


 シュウちゃんからチョコをうけとる前に、わたしも言う。


「あ、あのね。わたしも、シュウちゃんにわたしたいものがあるの」

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