010
side:K
「キミたちは死んじゃったんだよ」
「う、そ……」
自称神様のガキはなんてことの無いように、にっこりと笑いながらそう言った。
隣の真白を見ると、手で口元を多い俯いている。
ここにきて目を輝かせていたコイツだが、流石に“死”という言葉に恐怖を感じたのか俯いた肩がほのかに震えている。
「ウソなんかじゃないよ。現にキミたちはボクが作ったこの空間にいるでしょ?神様のボクが作ったこの世界に生身の人間が来れるわけないでしょ」
生身の人間が来れるわけない?んなの俺らが知っているわけないのに、当たり前のことのようにいうクソガキは、やれやれといった顔をする。
そろそろ一発入れてやろうか。
そう思うが、ぎゅっと拳に力を入れ我慢する。
「んで、俺たちをここに呼んだんだ?」
「流石に、関係ないのに巻き込まれて死んじゃうのは申し訳ないと思って?……それにしても、死んじゃったって聞いてもお兄サンは落ち着いているんだね。なんで?」
「……職業柄、そういった覚悟はしてるからな。まさかこんな非現実的な理由が死因になるとは思ってみなかったけどな」
こてんと可愛らしく首を傾げてはいるが、その眼には何も映していないような不気味な表情で問いかけてきたガキに、覚悟はしていたと答えるとつまらなさそうに「ふーん」と言われた。
俺の返答はどうやらガキのお気に召す回答ではなかったらしい。
俺に対しての興味は失せたのか、今度は俺の隣で微かにふるえている真白へと視線を移した。
そして、ガキが真白に声をかけようと口を開いた瞬間、それは起こった。
さっきまで俯いて震えていた真白が、ガバッという効果音が付きそうな勢いで顔を上げると、ものすごい勢いで目の前のガキに詰め寄ったのだ。
「ふざっっけんな!!!!私がどれだけ明日を楽しみにしてたかわかってんの??半年だよ?半年も待ってようやくめっっちゃ気になってたゲームの発売日で朝一に家に届くように予約してたものが明日届くんだよ?しかもようやく休みが取れて二週間くらいはゲーム漬けの毎日を送れると思ってクソ面倒くさそうな客と新人のクソ面倒な会話も我慢してたのに!!死因は他人様の身勝手な逆恨みみたいな感じな上にあのバカ共の巻き込まれ事故とかほんっっとにふざけんなし。あのバカ共もバカ共を召喚しようとしたクズ共もマジで全員くたばれ×××して××を××してやる……」
真白の突然の行動に驚いたのもつかの間、すごい剣幕でいつもの真白からは想像できないような言葉が出てきて、しまいには女が言っていいような言葉じゃないものまで飛び出しいてくる。
死んだという現実にショックを受けふるえていたわけではなく、怒りでふるえていたわけだ。
しかも、死んだことに対して怒ってはいるが、ただただ楽しみにしていたゲームができないというところにキレている。
クソガキは、最初こそ何が起きたかわかっていないような唖然とした顔で真白を見つめていたが、それを理解した瞬間腹を抱えて爆笑し始めた。
「クッ…フフ…っ、まぁまぁ、……落ち、着いてよ、お姉サン」
爆笑しているガキにさらに怒りが募ったのか、さらに詰め寄ろうとした真白にガキは落ち着いてと息も切れ切れになだめるような声で言う。
そんなガキに落ち着いてられるか、叫んだ真白だったがガキの一言に一瞬で大人しくなる。
「お姉サンとお兄サンには、お詫びにそのバカ共とクズ共がいる世界に転生してもらおうと思います!ちなみ、魔法があってモンスターもいる世界だよ。お姉サンの言ってるゲームみたいな」
「私も魔法使える?」
「もちろん、お詫びにお姉サンには今までしてきたゲームで使っていた魔法が何でも使えるようにしてあげるよ」
「……ついでに育成関係……生産系のスキルと知識もつけてくれる?」
「おーけー、つけるよ」
「オーナーには魔法系じゃなくて、物理チートでお願い」
「それも大丈夫」
「私たちを向こうに転生させる目的は?」
「本当にただのお詫びだよ。だから、キミたちは向こうの世界で自由に過ごしたらいいよ。キミたちを殺した奴らに復讐するでもいいし、アイツ等にはかかわらず異世界スローライフ楽しんでもいいし、魔王と呼ばれているヤツを倒して勇者になってもいいし……好きに過ごしたらいいよ」
ガキの言葉に静かになった真白は、よくわからない話をガキとしている。
完全に二人の会話について行けない。
何となくなくわかるのは、異世界には魔法なんてものが使えるということと俺たちを其処に転生させること、そしてなんだかわからないが真白がそのことについてガキと何か交渉をしてるということくらいだ。
泣きわめかれたりするよりだいぶいいと思うが、これはこれでどうなのかと思う。
さっきまでの剣幕は何処へ行ったのか、真白は目を輝かせている。
本当にそれでいいのか……。
「まぁ、そういうことだから……異世界生活を楽しんでね!お兄サンお姉サン」
2人の話し合いは終わったのか、にっこりと今まで一番見た目通りな笑顔を見せながら手をふる。
その瞬間、俺たちの足元の床がなくなった。
いや、待て。
展開が早すぎるだろう。
俺はどう話し合ったか、何が何だかわかってないんだが。
そういおうと思ったが、時すでに遅し。
ここに来た時のように俺たちの身体は真っ逆さまに落ちていった。
落ちるとき、かすかにガキのつぶやきが聞こえたような気がしたが、身体が落ちる浮遊感とともに俺の意識も途切れた。
「ふふ、面白いことになりそうだなぁ。精々ボクを楽しませてよねお二人さん♪」
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