すみれ紫の花

ラン

長けていただけの男 読み切りエッセイ

陽気なサンバカーニバルの夜に


人目を避けた暗がりで初めての相手と長く甘い口付けをした。


カーニバルから漏れた明かりでお互いの唇を探した。


堪らなくなった2人は車の中へ移り、男は女の胸をはだけて手や唇で愛撫した。


車の外と中は別世界で、いわゆるセックスにまでは至らなかったものの


男は何時までも執拗に女の体を愛した、女はそれをただ受けていた。


男の吐息は熱く荒い塊、女は丸で男に食べられているかのように身を任せるしかなかった。


愛してると直情的に表す男の熱い甘さ、 挿入が無い為、事の終わりは区切りが付けにくく、 男は女に優しい口付けをしてそれを終えた


そんな2人がセックスをしたのはそれから2週間後。男の部屋だった。


いそいそと手料理を作る女にありきたりに男は欲情し、上半身より先に下半身を露骨に唇と舌で攻めた。


明かりも消さず荒々しい愛撫。 太ももを両手で弄りながら攻めた。


女は丸で泣いているかのようなよがり声を出していた。


「ああ愛しているよ」


低い声で女の背後に絡み付き後ろから腰をゆっくりと艶めかしく使う。


後に彼らは男の浮気が原因で別れた。


女は半年間毎夜すすり泣くほどだった。


それは見事なまでに男に体の全神経を食べられてしまっていたからだろう。


男は自らの感情の高ぶりをセックスという行為で表現することに長けていただけ。


大抵の女のことなら熱く美味しく食べることが出来た。


あのうねるような甘美な行為はこの女への愛の重さを表しているのではなかった。



悲しい、あなたはすみれ、女は後に歌を詠んだ。


子供の頃からの育ちに恵まれなかった女は他人から神経を食べられがちで体が感じやすい。


この女はただ感じ過ぎたのだ。




すみれ、紫の花。

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すみれ紫の花 ラン @ran_kikyou

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