アヤメ家

文月柊叶

0. 始まりの噂話

 ――ねぇ、聞いたこと、あるでしょ?

 「アヤメ家」って怪談。え、嘘、知らないの? あたしの小学校では有名なんだけどな。そっかぁ、そっちにはこの怪談、ないんだね。

 あのね、アヤメ家っていう家があるの。おっきいお屋敷でね、そこではね、昔からずっと人を殺してきたの。

 は? 何でって? 馬鹿ね、わからないから面白いんでしょ。

 ……何を話したかったんだっけ。えーと。……あぁ、そうだ、そうだった。この話の続きを今日聞いたの! あたし、もう誰かに話したくて話したくてたまらなくって!!

 実はね、アヤメ家って、実際にあるんだって。そういう名字の人たちが、本当にいるんだってさ。

 隣の県の……ナントカ郡。絶対田舎だよね、だって郡だよ、郡。

 ま、それだけ。またこの公園で会えたら、一緒に遊ぼうね。ばいばい、☓☓ちゃん。

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