*解説〈終〉【輪廻システム】
神の力を分け与えられし、五人の男女。
──【神子徒】……。
もし、人類最後の希望を象徴する彼らが。
万が一にも『敗北』するような事態へと陥ってしまった場合……。
果たして、この世界はどうなってしまうのであろうか?
無論。
人類神はその様な最悪の事態も想定し、予め具体的な『対策』を用意しているようだ。
そして、その『対策』こそが。
人類神が握る最後の切り札であり……。
【神子徒】達が縋る、最期の砦なのである。
*
〜【再生の儀】〜
人類神は自らの手足でもある能力。
──【知識】【治癒】【破壊】【鼓舞】【創造】の力を、自身の配下となる【神子徒】達に分け与えてしまったが……。
どうやら、たった一つだけ。
自身の手元に、その特別な力を残していたらしい。
それが──【再生】の力だ。
極力、考えたくはないが……。
人類の希望である彼らが敗北してしまった場合。
つまり『世界の終焉が確定してしまった場合』は、間違いなくこの力に頼る事となるだろう。
そう、直接的な手段で敵と交戦する術を持たない人類神の役目は……。
──『滅びゆく運命にある地球の時間軸を停止させ、その間に戦況を立て直す』こと。
荒れ果てた大地。
戦死した人類達の肉体と魂。
それらを全て復元し、更にそこへ保護した人類達の魂を再配置させることさえ出来れば……。
実質的に、何度でも【神子徒】達が戦える舞台を用意することが可能なのだ。
すなわち、【再生の儀】とは……。
──『地球上にいる全人類の魂を一時的に特殊な神域空間へと保護し、その間に地球の再構築を目指す』という壮大な計画を指す儀式なのである。
途方もない労力。
そして、膨大な時間を有することにはなってしまうだろうが……。
この方法以外に、敗北から逃れる道はない。
そう、例え心が壊れようとも。
人類神は、人類達の為に。
最期まで抗い続けねばならないのだ。
*
〜【転生への代償】〜
……しかし、残念ながら。
膨大すぎる力とは常に、それ相応の『大きな代償』が付きモノ。
そして、その代償が降り注ぐのは……。
他でもない、彼ら五人の戦士達なのである。
〈代償その一〉
──それは【神子徒】達の誰かが力尽き、心肺停止状態で【再生の儀】を迎えてしまった際に発生する。
人類神は、生き残った人類達の魂だけでなく。
戦いで朽ち果てた【神子徒】達の遺体からも、その魂を抜き取って保護しなければならないのだが……。
当然、魂のみを救い上げても意味がない。
そう、魂の器となりし『新たな肉体』も、地球と同様の手順で再構築させる必要があるのだ。
……しかし、神の子達の肉体は単純な人の子達の肉体と違って、非常に特別な造り。
完全に破滅を迎えてしまった傷だらけの肉体を再生させるには、それなりの時間を費やさねばならない。
結果。
力尽きてしまった【神子徒】は、世界の再構築までに器となる肉体の修復が間に合わず……。
──『次の世界への【再出撃】が不可能となってしまう』のである。
死の代償は。
とてつもなく長い眠り。
更に次の世界が訪れるまで……。
己の無力さを恨みながら、孤独な眠りにつく事となるだろう。
なるほど。
ならば、『ただ生き残ればいい』だけの話ではないか。
……否。
それも一概に得策とは言い難い。
〈代償その二〉
──それは【神子徒】達の誰かが生存した状態で、【再生の刻】を迎えてしまった際に発生する。
もし、無事に最期まで。
己の生を全うする事が出来た場合。
その生き残った【神子徒】達には。
次の世界が訪れるまでの間、魂の入った肉体ごと神域空間にて過ごしてもらう事となるのだが……。
どうやら、神として未熟である彼らの身体は、その神域空間内に発生している特殊な空気にまだ耐える事が出来ないらしい。
その為、あまりにも長く神域空間に彼らの身を晒し続けてしまうと、彼らの器であるその身体に『とある致命的な劣化現象』が起きてしまうのだ。
結果。
もし、仮に生存した状態で【再生の刻】を迎える事が出来たとしても、また別の代償が発生。
──『次の世界では、容姿が酷く収縮した状態で【再出撃】しなければならない』のである。
生の代償は。
非力な子どもへの退行。
例え、【再出撃】を果たしたとしても……。
全ての能力値が大幅に下がってしまっているその不完全な姿では、まともに戦う事すら儘ならない。
ただでさえ、戦乱渦巻く過酷な環境である。
……細心の注意を払わなければ。
今度こそ、誰よりも早い最期を迎えてしまうこととなるだろう。
*
──以上が【再生の儀】についての全容である。
……ここまでで分かる通り。
【神子徒】達である彼ら五人には、目も当てられない悲惨な末路が何度も待ち受けているのかもしれない。
しかし、それでも……。
彼らの生き様を最後まで見届けてやって欲しい。
彼らが〈人類存続の命を完遂させる〉のか?
それとも〈諦めて敗北を受け入れる〉のか?
最期の瞬間が訪れる。
その刻まで……。
*
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