こうして二人は恋人を得た。
雨のモノカキ
本編
彼らは『ハブられた』存在であった。
それは現代でも異世界でも変わることなく、転移され、なんか、最近よく見かけるファンタジーのテンプレのごとく、やはり彼らはハブられた。
片や見た目が強面のヤンキーではあるが、それは意図しないものであり、姉ちゃんのファッション雑誌で一生懸命勉強した結果で、しかしながらうまくいくこと叶わずにグループにも入れないまま、独りぼっちとなった。
名をリョウという。
もう片方はメカクレ低身長に小声のオタ臭漂わせる少年で、一部界隈からはその手の本であるならば間違いなく被害者になりかねない逸脱した素材ではあったが、残念ながらノンケばかりの現代においては掠ることもなく、仲間内に入ることもできず、結果的に独りぼっちとなった。
名をレンという。
この二人は、その他大勢の余り者であった。
だからこそだろう。
「……なあ、俺ら組まないか?」
「え、あ、そ、よ、よろしく、で、です!」
はい、二人組作って~、という呪詛じみた言葉さえも乗り越えられる、そんな二人になったのは。
〇
「――はあ!」
「これで二十匹……全部討伐できたね、リョウ!」
「レンのおかげだよ。相変わらず俺一人じゃ、処理できなかった」
「ううん、リョウが前に立ってくれるから、僕は安心して頑張れるんだ」
「レン……」
「……リョウ」
なんかもう恋人のような雰囲気を発しているが、残念ながら、まだ、そういう関係ではない。
もはや二人を遮るものはなく、凶悪なモンスターであろうと、切り抜けられた。
それはもう何十巻にも及ぶ、彼らの冒険の積み重ねゆえであり、残念ながら本話では取り上げることはないので語ることができないのが、非常に残念である。
そう、いつも通りの討伐であった。
いつも通りならば。
「――レン!」
「えっ」
倒したはずの植物モンスターが起き上がり、最後の一撃をレンに当てた。
それは粘度の高い液体で、レンの体全体を覆う。
リョウは今までの何よりも素早い動作でモンスターを切り伏せ、レンに纏わりつく粘液を取り除いた。
「レン!しっかりしろ!」
「……リョウ、ごめん」
「謝んなって! ほら、すぐに戻るぞ!」
レンをおぶったリョウは、すさまじい速度で森の中を駆け抜け、城下町へとあっという間に戻った。
いつも世話になっている教会へ駆け込み、レンに異常はないか確かめてもらった。
しかし。
「……状態異常はない、か」
宿屋に戻ったリョウの顔は浮かばれない。
未だにレンはベッドの上で荒い呼吸を繰り返し、汗を噴き出し続けていた。
見るからに以上のある症状ではあるが、教会では問題なしと言われてしまった。
ヤブなんじゃねえかと疑い掛けそうになった時、レンの目が覚め起き上がった。
「レン!」
「……リョウ」
「レン、大丈夫か?苦しくないか? 俺に何かできることはないか?」
「……リョウ」
「レン?」
「ごめん」
え、と呟く間もなく、リョウの唇はレンによって奪われた。
そのまま押し倒すように倒れこみ、リョウは咄嗟のこともあって、そのまま床へと押し倒されてしまう。
深く深く、唇を重ねあい、あまつさえ舌まで捻じ込まれてくる。
リョウは思わず引きはがそうとして――。
涙で潤んだレンの瞳に、思考も何もかもが吸い込まれてしまった。
呼吸は互いの肺から供給されるがごとく、唇をむさぼり続けた。
はじめこそはレンだけであったが、リョウもまた、慈しむようにその勢いを増して貪るように吸い尽くしていく。
どれだけの時間が経ったのかさえわからない。
唇が離れたとき、とても濃く、長い、唾液の糸が二人を結んでいた。
顔を真っ赤にして荒い息を整えあう二人。
「……げんめつ、したでしょ」
「いんや……ちょっと困ったけど、でも、嫌じゃなかった……お前だったし」
「……ねえリョウ、最初で最後でいいからさ」
「ん? っておい!」
「僕と、最後まで、シてよ」
ベッドの上であられもない姿をリョウに見せつけるレン。
誘うように腰を振り、まだ何物も受け入れていないはずの、そこをいやらしげに見せるその様に、リョウは固唾をのみ、凝視した。
思考は、しなかった。
あっという間に衣服を脱ぎ捨て、気が付けば、レンの上に覆いかぶさって。
「初めてだから、痛くしても……勘弁な?」
「……痛く、して?」
精一杯の理性を込めた気遣いを、妖艶な笑みと挑発で打ち壊した。
そこから先は、もはや獣の如き勢いで――。
〇
鳥が鳴く。
朝を告げる。
とても熱い一夜を過ごし、二人は、気まずく目覚めた。
「……おはよう」
「……おう」
「まだお尻がひりひりする……んっ」
「お、おい!まだ入ってんだから動くなって!」
「抜かないと、起き上がれない、からっ……お、おっきくしないでよ!」
「無茶言うなよ!」
「あ、も、やだ、あたっちゃうからぁ……」
「……ごめん、レン。もう一回、いいか?」
「え、うそ、ま、やだっ」
「だ、出したら小さくなるから!」
結局のところ。
彼らは翌朝を拝むまで繰り返してようやく、繫がりをやめた。
防音魔法なんて張ってないので、宿屋を中心に数多くの人々にその関係を認知され一度は絶望したが、それ以上の幸せを二人は得たので、大した問題には、当人たちにとっては、ならなかった。
こうして二人は友人を経て、恋人を手に入れたのである。
―終―
こうして二人は恋人を得た。 雨のモノカキ @afureteiru
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