キレスの想い
騒動が収まったとはいえ、あの場に私たちが居続けるのは他の夜会の参加者からすれば邪魔でしょう。そのため、私とキレス様は控室の方へ移動することにしました。
「先ほどは助かりました。さっさと逃げてしまえばよかったのですが、そうしてもまだ追ってきそうな雰囲気でしたので」
あれの半分がキレス様の仕込みだったとしても助けられたことに変わりはありません。
「婚約者として当然のことをしただけだ。それに君を他の者に取られるような状況にするつもりはないし、君に手を出すことがどれほどの事なのかを知らしめないといけないだろう」
「そこまでする必要は無いと思うのですが」
私の言葉を聞いてキレス様は私の体を引き寄せました。
「君が学園を卒業するまでは婚約しか出来ない。しかし、1年早く私は学園を卒業しなければならなんだ。あれくらいはさせてくれ」
そう言えばキレス様は今年度で学園を卒業することになっていましたね。そして私の卒業は来年度。1年程差があるのですよね。それでキレス様はその間、私に手を出させないようにと、あのようなことをしたという事ですか。
「わかりました。ですが、どうしてそこまで……」
「最初に言っただろう。君を手放したくないからだ。私は君に一目ぼれした。その時に絶対に君を手に入れたいと思ったんだ」
絶対にそれだけではない気がします。さすがに一目ぼれだけでここまで行動を起こせるとは思えません。普通の貴族であればあのような場では何もせず、後から抗議などをするものなのです。
だから、他にも理由があると思うのですが、私がキレス様と関わりだしたのは本当に最近からです。キレス様の人となりは表面上のものしか知っていません。
もう少しキレス様の事を知らなくては、そう心に誓ったところでキレス様が私の体を抱きしめてきました。
「君はまだ私の事を疑っているのかもしれない」
「いえ、疑っている訳では」
「いきなりこんなことを言われて、すぐに信用するような人は少ないから仕方がない。だけど、私が君の事を愛していることは本当だ。それだけは信用して欲しい。
ノエル、私は君のことが好きだ」
「っ!?」
最後の言葉だけ耳元で囁かれ、心臓が跳ね、身体が色を持ってゾワリと震えました。
こういったことはいきなりされると驚くのでやめて欲しいところですね。まあ、キレス様が私の事を好いてくださっていることは十分にわかりますので、キレス様の気持ちをしっかりと受け止められるようにしなければなりませんね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます