第2話 天使様そんな子供みたいに泣かないでください!

「どうしてもだめですか?」

 ダメなものはダメだ、そんな可愛い顔をされても今回に関しては許すことが出来ない。

「どうしてもだめです」

「そんな…私のノルマが、ノルマが」

 天使の目が潤んでいく様子が見える。

 っていうか一回流してたけどノルマってなんだ、そんな目標感覚で人の人生を狂わせないで欲しい。


「あーもう。 泣かないでください、一緒に他の解決方法考えますから本当に泣かないでくださいよ」

「ほんとうですか?」

 涙を拭いながら質問をしてくる、こんな顔されたら嘘なんて付けない。

「本当です」


「私たち天使は人間さん達に世界を救っていただくために転生させるんです。 転生させた人間さんたちはその世界の悪と呼ばれるものを倒していただいてます」

 何を言っているのかあまり分からないが、天使様はどうやら人間を別の世界に移したいらしい。


「それで、何を手伝えばいいんですか?」

「私たちは基本、この世界で強い不満を持って亡くなってしまった人間さんや、この世界を寿命以前にリタイアしてしまった人たちを転生させているんです。なので転生してもいいと考えている人間さんを紹介してくれませんか?」

 真剣な表情や先程からの焦り具合を見るに嘘は言っていないだろう。

 

「転生してもいいと考えてる人間ですか、結構難しいですね」

 途中で人生を投げ出してしまう程この世を憎んだ人間を僕は知っているだろうか。

「実は転生って結構大人気で、ほら、人間さんのsnsやインターネットで調べても『転生したい』とか『転生する方法』とか上位で出てくるでしょう」


 得意げに天使はタブレット端末を操作し、ネットユーザーたちの「来世は剣と魔法が使える世界のチートイケメンに転生させてください」や「転生するなら今度は可愛い幼馴染も付けてください」などの妄想を煮詰めたような意見を見せてくる。

 いくつか見覚えのあるサイトを見せてもらったので、これも嘘ではないのだろう。

「確かに転生というものが人気があるのは分かったのですが、ならわざわざ僕が探すまでもなく貴方が直接転生させればいいんじゃないですか?」

 その言葉を聞くと天使は「うっ」とダメージを受けたかのように声を出してうなだれる。


「実はそんな転生したい人たちの事は、優秀な天使が直ぐに連れて行っちゃうんですよ。 私のような一般天使は貰った情報を頼りに迷っている魂に話しかけて説得したり、地道に人間さん達を偵察して自分から売り込みに行くしかないんです…」

 聞いてみると何とも切ない天使事情がそこにはあった、どうやら天使さんたちもそれなりに大変な事情があるらしい。


「でも、僕には転生したい人を見つけるなんて難しいです。」

「手伝ってくれるって言ったじゃないですか~ 

 お願いしますよ城戸崎さーん、城戸崎さんの手伝いやすいように『この世界でも使える目』上げますから! お願いします、手伝ってください」

 そう人間に対しても躊躇なく頭を下げる天使の姿は何とも残念に感じる。最初話しかけてきた時の見目麗しさは一体どこへ行ってしまったんだ。

 頭を下げている天使から目を逸らしてそんなことを考えた。

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