俺じゃなくあいつを転生させてくれ!

仙次

第一章 え、人違いですか?

第1話 天使様人違いですよ!

昼寝してから目を覚ますと目の前に金髪の美しい女がいた。


「あなたは死んでしまいました」

 目の前の女がそんな突拍子もない事を述べてくる。


 両肩の辺りから生えている大きな羽のようなものを見ながら困惑していると、美しい女は話を続けだした。


「佐藤淳さん、あなたには転生して新しい世界へと行ってもらいます」

「えっと、僕まだ死んでないと思うんですけど、名前も佐藤じゃなくて城戸崎ですし」

「え?あれ、そんなはず、ちょっと確認しますね」

 そう言うと彼女は手を顔に当てて、何かを僕でない誰かに対して小声で何かを伝えているようだった。

 女は先程までの凛々しさをなくし、慌てている様子は初対面の俺ですら読み取ることが出来る程だ。相手が突拍子もない事を言ってきたとはいえ少し申し訳なさを感じる。


 でも、僕には死んだ覚えがない、学校が終わり家に帰って昼寝をしていたはずだ。なんの心当たりもなく急に死んでしまう事などない!…と思いたい。


「あの、最近トラックに跳ねられたりとかってしてませんか?」

 恐る恐る彼女が質問をしてくるが、あいにくそんな惨い経験はしたことがない。

「心当たりはないですね」


「じゃあ、過労死するまで働いてたりって?」

「まだ学生なのでバイトしかしてないんですけど、週に3回しかシフト入ってないです」


「じゃあ、じゃあ、強盗やテロリストから誰かを庇って犠牲になったりとかは」

「してないですね」

「本当に佐藤さんじゃないんですか?」

「はい」

 最後の回答を聞くと、女性は半泣きになりながら「ううっ」と声を出している。

 可哀想なのか? 戸惑いと同情の感情が同時に脳に同居を始めた。可愛い女の子の慰め方なんて知らない。


「大丈夫ですか?」

「ごめんなさい、実はこっちの手違いで本来転生させる人と間違ってきちゃいました。本当にごめんなさい」

 転生とは輪廻転生の転生の事だろうか、特に何か宗教を信仰していたわけじゃない。これだけ美しい女の人がいるのなら、この体験の期に何か宗教でも進行をするべきなのだろうか。


 それに変なことを言われて動揺したのは確かだが、別にこちらに何かデメリットがあったわけがない。ここは美人と出会ったとして許すとしよう。

「じゃあ、元の場所に戻していただけませんか?」

「あの、一つ相談なんですけど、よかったらこのまま転生していただけませんか?」

「転生って事は死ぬって事ですか?」

「端的に言えばそうですね、今の世界をやめて、新しい魔法のあるファンタジーみたいな世界へ行ってもらいたいんです」

「死ぬの怖いんでやめておきます」

「待ってください、新しい世界はいい所ですよ!自然は豊かだし、優しい人も多いですし…それに、男の子なら一度は憧れる魔法のある世界なんですよ!魔法が上手く使えれば何でもし放題、空を飛ぶことだって、鬱陶しい移動の時間を短縮することだって可能です!」

「それは魅力的ですね」

「でしょ!人間さんも転生する気になったでしょ?」

「でも僕はまだやり残したことがあるので、すみません転生は出来ません」

「お願いします!そろそろ転生させないとノルマが足りなくて困ってるんです!間違えちゃって、評価さげられちゃうと困るんです」

「そう言われてもこっちだって困りますよ、僕にはまだやり残したことが沢山あるんです!」

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