ボクが守るツバサ

Aki(IP)

序 ツバサ

 ボクがツバサを訪ねることは、悪いことになった。


「やめろよ、ボクが勝手にやったんだ。ツバサは悪くない!」


 ボクは必死に抗弁したけれど、ツバサのお母さんは、カンカンに怒っていて、ボクが言うことも、ツバサが言うことも聞いちゃいなかった。


「女の子のユイちゃんがうちの二階の窓から落ちて怪我をしたのに、男の子のツバサが悪くないことがありますか!」


 それは、ボクが勝手にやっただけだよ、と反論したけれど、怒り心頭のお母さんには、届かなかった。お母さんは、ずっとボクに対してではなく、ツバサに対して怒っていて、ボクのことなんか、目に入っていなかった。


「ごめんなさい、ごめんなさい、お母さん。ごめんなさい、ユイくん」


 ツバサは、ずっと泣きじゃくっていた。

 この子は、いつもそうだった。おまんじゅうのようにフワフワしていて、びっくりするとすぐに泣いちゃう子。ボクが守ってあげなければいけない子。


「ボクとツバサの間のことだよ。お母さんには関係ないよ!」

「警備会社の人も来てるのに、関係ないことがありますか!」

「これは我が家のことです。私が警備会社の人と話しますから、ユイちゃんは、お家にお帰りなさい。」


 結局、びっくりした顔のパパが迎えに来て、ボクは、お母さんに叱られて泣きじゃくるツバサを後に残していくしかなかった。

 ツバサを最後まで守れなくて、悔しかった。

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