第121話 『ネットゲーム93 夜桜忍法帖』その4

 『夜桜忍法帖よざくらにんぽうちょう』をプレイするようになってから私がプライベ帰りに行くようになったのが、当時新宿駅地下街の地下B7出口そばにあった巨大喫茶店「カトレア」だ。

 前に話したとおり、当時のプライベはリアクションの発送日に合わせ、都内数カ所の公民館などで開かれていた。公民館の貸し切り時間は大体昼間で、時間が来ても話し足りないプレイヤーは喫茶店やファミレス、居酒屋などに流れるのが常だった。いつのまにか、その二次会会場として使われるようになったのが「カトレア」だった。各地のブライベから流れてきた客を収容しても余裕のある店だったのだ。

 入口には喫茶店らしくケーキの冷蔵ショーケースがあり、カップル席などが並んでいるが、奥に行くと椅子とテーブルが10人くらい横に座れるように並んでおり、大人数の客はそこに陣取っていた。

 『夜桜忍法帖』は忍軍の対抗ゲームだったので、所属忍軍で固まって座るのが常だった。私の所属する「枯葉かれは忍軍」プレイヤーたちは、名前にちなんで「カレーハンバーグ」略して「カレハ」を頼む者が多かった。別の忍軍で活動している友人プレイヤーと話すために移動する者もいたが、アニメやゲームなどの話をしながら駄弁る人も多かった。

 トイレに行くため店内を歩いていると、TRPGをプレイしているテーブルがあったり、様々な人々が思い思いにくつろいでいる光景が見られた。

 「カトレア」が閉店したのは90年代後半だったろうか。跡地には当時関東地方では珍しかった漫画喫茶が出店し、広い店内を生かした商売だと感心した。


 かつて『クレギオン#1』でカセットテープに光GENJIの曲を集めてイメージソング集を作った私だが、『夜桜忍法帖』でもイメージソング集のカセットテープを作った。ただし今回は、幼稚園のプレイヤーたちにもリクエストしてもらい、バラエティ豊かな曲をそろえた。

 私は当時良く聞いていたPSY・Sサイズから二曲、「遊びに来てね」「VISION」を選んだ。プレイヤーの一人は、『プロスペローの本』というイギリス映画のサントラからマイケル・ナイマンの曲「MIRANDAミランダ」をリクエストしてきた。幸いサントラCDを買うことができたので私も聞いてみたが、波乱万丈な物語のイメージソングとして選んだのも納得だった。


 かくして、本部襲撃時に幼稚園を焼かれた珊珠さんじゅたちは近くの村に仮住まいし、敵の襲撃を防ぎながらなんとか最終回を迎えることができた。これも園長のブレイヤーを始め、多くの仲間が協力してくれたお陰である。


 次回はPBM業界の新規参加会社の作品を取り上げたい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る