第81話 短大のクラスメイト、カラオケデビューの話

 1話飛んだが、短大のクラスメイトの話をしよう。

 高校も短大も女子校だったが、最大の違いはクラスメイトの幅の広さである。何歳か尋ねたことはなかったが中年の女性もいらっしゃったし、アジア諸国からの留学生もいらっしゃった。


 ただし、私が親しくしていたのは同年代のアニメ好きなクラスメイト数人だった。当時はアニメ『よろい伝サムライトルーパー』の同人誌が爆発的に流行っており、声優陣のイメージアルバムも『青春ラジメニア』でよくかかっていた。今で言うアニメ内声優ユニットの走りであり、私も気に入った曲を聴きたくてCDアルバムを買ったほどだ。


 何がきっかけかは覚えてないが、私は親が出かけて不在だという友人の家に、他の友人と一緒に泊まることになった。

 翌朝目覚めて朝食の支度を始めた友人は、ラジカセで『サムライトルーパー』のCDをかけはじめた。草尾くさおたけしの『レイニーレイジーモーニング』が流れ、晴れた朝にもかかわらず、雨の朝を歌う草尾毅の甘い声が室内に響き渡っていた。いまでもこの曲を聴くと、光の差し込む朝の部屋を思い出す。


 しかし、短大の友人たちとのつきあいは卒業と共に終わってしまった。一方、高校の友人であるSちゃんやHちゃんとは卒業後も時々集まり、喫茶店で近況を話したりしていた。


           ○


 短大に通学する際、いつの間にか車窓からコンテナの並ぶ空き地が見えるようになった。当時普及し始めた郊外型のカラオケボックスである。カラオケ自体は父方の祖父母の家で8トラックのテープを使って親戚たちが歌っているのを見ていたが、自分が歌うのは恥ずかしかった。

 そんなカラオケボックスに初めて行ったのも短大の友人たちとだった。何を歌おうか悩み、私が選んだのは『きまぐれオレンジ☆ロード』のOP、中原めいこ「鏡の中のアクトレス」だった。CDでよく聞いていたのと、当時まだアニソンがほとんど入ってなかったカラオケでたまたま入っていたためである。楽しいと言うよりとにかく恥ずかしかった。


 次にカラオケで歌うチャンスが訪れたのは、短大の文化祭であるクラスが設置したカラオケ部屋だった。この時は歌いたい気分が勝り、アニソンではないが好きだった工藤静香の「黄砂に吹かれて」を歌った。私がカラオケに本格的にはまるのは社会人になってからである。

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