第79話 『パーマン』の卒論について

 前回書いたとおり、短大2年の国文学の卒論に『パーマン』を選んだ私は、原稿用紙で約160枚の文章を手書きで執筆した。もちろんノートに下書きをしたはずだが、その時の原稿はどうしたか覚えていない。


 論文の冒頭には表題と論文の要約が書かれていた。自サイトに掲載している本文から一部抜粋して紹介しよう。


『少年は「変身」で何を得たのか? ~私的『パーマン』論~


  要約

資料 『パーマン誕生』から現在への道程

一章 序論-私にとっての『パーマン』

二章 小集団(グループ)としての『パーマン』

三章 バードマンの立場とその変容

四章 須羽すわみつの苦悩

五章 『バード星への道』読解

六章 終論-『パーマン』の言いたかった事

  参考文献一覧


~要約~


 『パーマン』は、藤本作品の発展の基礎となった作品である。しかし、その他の作品と違うのは、成長する主人公、須羽すわミツ夫の存在であり、集団のドラマだという点である。

 この論文では、二章で集団ドラマとしての面、三・四章で、ミツ夫の内面にスポットを当て、名作の数々を通して、その魅力の分析をしてみる。そして、総仕上げとして原作最終話『バード星への道』を五章で鑑賞する。六章では、「『パーマン』は現代の神話である」という結論へと、文を進めていく。

 何分、このようなタイプの論文は珍しく、著者の思い入れが強いので、大風呂敷を広げてるように見えるかも知れないが、いわば、一人の少女がめぐり逢ってしまった、「人生の道づれ」の評価なので、そこはお許しいただきたい。』


 今となってみれば大仰おおぎょうな文章であるが、それだけ『パーマン』を評価してほしかったことの表れだろう。

 論文ということで、巻末には参考文献も記されていた。


『 参考文献一覧

藤子・F・不二雄著

 『藤子不二雄ランド vol,146~206 新編集パーマン1~12』

              中央公論社 1987,6,12~1988,9,9


『中年スーパーマン 左江内氏』

          双葉社 昭和54年4月1日


小学館編

 『コロタン文庫60 藤子不二雄まんが全百科』

           小学館 1980年8月20日


藤子不二雄監修 池田憲章構成

 『コロタン文庫97 パーマン全百科』

           小学館 昭和59年11月10日


藤子不二雄(共著)

 『二人で少年漫画ばかり描いてきた』

      株式会社文藝春秋(文春文庫253-1) 1980年9月25日


ネオ・ユートピア編集部編

 『藤子不二雄ファンサークルマガジン NEO UTOPIA』

  9号 1988年6月 11号 1989年5月 22号 1996年1月1日


朱鷺田祐介(ときたゆうすけ)著

 『Fantasy Making Series1 ファンタジーメイキングガイド』

            株式会社新紀元社 1990年12月7日


 アニメ作品については、録音テープと名台詞ノートに拠った事をお断わりしておく。』


 藤子不二雄関連の参考文献の中になぜかある『ファンタジーメイキングガイド』だが、論文では主にチームやパーティー内のキャラクター類型の参考にしている。新紀元社はこういった解説本をよく出しており、私はゲームブックやTRPGの資料として購入していた。


 原稿用紙はリングファイルに綴じ込んで教授に提出し、講評してもらうのだが、私は本文中にパーマンたちのイラストを二枚挟みこんでいた。一枚はバードマンとマスクを外して素顔を見せたパーマンたち、もう一枚はパーマン1号とバードマンである。もともと絵を描くのが苦手な私だが、このイラストはミリペンで清書した上に色鉛筆で着色するという気合の入った物だった。


 教授の講評は残っていないが、特に咎められもせず、褒められもしなかったと記憶している。とにかく、一つの大きな目標をやり遂げた私は満足していた。

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