第45話 文化祭用のパーマン二次創作、朝鮮戦争の資料集めの話

 さて、一話飛んだが前回の続きである。

 高一の文化祭に合わせてパーマン二次創作を書き下ろすことにした私は、執筆中だった『パーマン・パラレルワールド・ストーリー・シリーズ (P・P・S・S)』と関係ない新規のエピソードを考えた。コンセプトは「もしも『パーマン』が劇場版長編映画になったら」。

 タイトルは『ピラミッド・ペンダントの秘密』。付けた者に超能力を与えるペンダントを宇宙人から託されたパーマン1号が、パーマン仲間やバードマンと共に巨大コンピューターに支配された惑星との宇宙戦争に巻きこまれていくという話だ。アイデアの元は以前紹介した児童小説『ピラミッド帽子よ、さようなら』や竹宮恵子のマンガ『地球へ…』、劇場版映画『Dr.スランプ』である。

 書き下ろしたとは言え、これも大学ノートほぼ2冊分という長編になってしまった。最初は分割して発表しようと思っていたが、友人のHちゃんが「一般のお客さんが続き読めないでしょ」と言うのに折れ、結局全話掲載することにした。

 印刷用の原稿用紙に手書きで清書していくのだが、授業中も構わず清書していた。いわゆる内職である。なんとか完成したものの、文芸誌の2/3は私の作品が占めることとなってしまった。ちなみに、反響は全くなかった。


 本作はシリーズ化しなかったが、ゲストヒロインとして登場させた女性バードマンのオリキャラを気にいった私は、「P・P・S・S」本編に逆輸入することにした。

 二次創作ジャンルには、自分の分身を作品世界に参加させる作品がある。友人のHちゃんがそういう小説を書いていた。やり過ぎると「メアリー・スー(海外の二次創作キャラ。やり過ぎな自キャラの代名詞)」となってしまうので危険だが、作品世界に入りたいという気持ちはファンの一つの楽しみ方だろう。私は自作のパーマン二次創作に分身キャラを出したことはないが、オリキャラの何人かには私の理想が反映されている。


 『ピラミッド・ペンダントの秘密』執筆後、私は棚上げになっていた『パーマンと朝鮮戦争』に本格的に取り組むことにした。あとがきによると、「幽体離脱+タイムトラベル」という設定を高校の友人にもらったことも後押しになっていたようだ。

 本作では登場人物の名前を考えるのが難関だった。種本となっていた児島こじまのぼるの三分冊『朝鮮戦争』に出ていた朝鮮人の人名や、学校で使っていた地図帳の地名をヒントにしていた。

 当時はNHK教育テレビでハングル講座『アンニョンハシムニカ』がスタートしており、参考のためにテキストを読んだりしていた。調べるうちに、朝鮮人の男性名には「行列字こうれつじ」という物が使われていることを知った。「行列字」とは簡単に言うと一族で兄弟やいとこが同じ一文字を使った名前をつけることである。

 実際の例を知りたくなった私は、朝鮮に詳しかった高校の先生から知り合いの朝鮮人の先生を紹介してもらった。当時どうして先生が朝鮮に詳しいと知ったかは覚えていない。放課後、高校の近くにある建物を訪問し、朝鮮人の先生に直接行列字についての疑問を尋ねることが出来、とても有意義な体験だった。なぜか外に自宅では見たことがなかった豆腐売りがラッパを鳴らして歩いていたことも覚えているが、もしかしたらこの時ではなかったかもしれない。

 ともかく苦労の末『パーマンと朝鮮戦争』は高一の終わり、1987年3月に完成した。本作のあとがきの署名は「大田康湖(P.N変えました)」となっている。これ以前の作品は本名及び中学時代に作ったペンネーム「太田静子」名で書かれていた。


 次回はペンネームが変わる前の最後の作品である『泥中の蓮』と、「大田康湖」誕生のきっかけの話をしたい。







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