第29話 「バード星への道」の話、小説執筆の話
アニメ『パーマン』の視聴に関しては、カセットデッキに録音できるようになるまでは親の目が気になるので、二階の自室ドアの隙間から弟たちが視聴しているのを陰で聞いていた。ちなみに『パーマン』だけではなく『六神合体ゴッドマーズ』もEDの「愛の金字塔」のために再放送を二階から聞いていた。
しかし、どうしても見たい話もあった。1984年1月3日に放送されたスペシャル回「バード星への道」。原作では最終回のエピソードであることは当時知らなかったが、パーマンたちがバード星に留学するための選抜を受けるという内容で、続きが気になる私は二階から必死にTVの音を聞いていた。
ところが、夕食の準備をしていた母親が揚げ物を始めたのだ。私は密かに階段を降りて続きを聞こうがしたが揚げ物には勝てなかった。ようやく揚げ物の音が止んだが、聞こえてきたのはミツ夫の「ありがとう、バードマン」という声で、そのまま話は終わってしまった。結局留学話はどうなったのか分からず、後で二階に戻ってきた長弟を「どういう話だったのか」と問い詰めたが、弟の説明では結局分からなかった。
アニメ版「バード星への道」は後年見ることが出来たが、原作通りミツ夫がバード星に留学してしまうと話が終わってしまうので、コピーロボットがバード星に留学するというオリジナルの結末になっており、私は肩透かしを食らったような気分になった。
私が『パーマン』に深くはまるようになったきっかけはもう一つある。長弟が持っていたてんとう虫コミックス『ドラえもん』24巻に収録された「めだちライトで人気者」だ。この話には大人になった星野スミレが登場し、のび太にミツ夫らしき少年の写真の入ったロケットを見せる。それはスミレの子かと聞かれ、彼女は「バカね、古いお友達よ」と答え、こう説明する。
「今は、遠い世界に行ってるけど、でも……。いつか、きっと帰って来るわ」
私はこの台詞を読んで衝撃を受けた。ミツ夫がおそらくバード星に留学し、スミレはその帰りをずっと待っているというのはどういうことなのか。当時はアニメリメイクに伴って描かれた新作の連載中であり、リメイク前の最終回である「バード星への道」については知らなかった。もしかしたら『藤子不二雄自選集』には入っていたのかもしれないが、当時は覚えていなかった。私はタイムマシンに乗って時の向こうからパーマンたちの将来をのぞき込んだような気分になった。
その答えは私が高校生になり、てんとう虫コミックス『パーマン』の最終巻となるvol.7が発売されてから明らかになった。藤子・F・不二雄はオリジナルの「バード星への道」に、パー子がパーマン1号にだけ素顔を見せるシーンを追加したのだ。新原作でパーマンとパー子のラブコメ話が増えたこともあり、「めだちライトで人気者」にもつながるスムーズな改変だったと言えるだろう。そして結局描かれることはなかったミツ夫とスミレの将来を多くの読者が妄想し、二次創作が盛り上がる要因になったのだ。
しかし私の二次創作はパーマンとパー子の物語よりも、バードマンとパーマンたちの疑似家族を妄想する方向に走っていた。中学3年になり、受験生になった私は試験勉強の逃避に小説を執筆し始めた。それがパーマン二次創作の第一作である『その後のパーマン』である。パーマンたちとバードマンが昭和35年(1960年)にタイム・トラベルし、「鳥羽家」として疑似家族生活を送るという内容だ。ただし草稿は中学2年の頃からルーズリーフに執筆し、褒められた話ではないが授業中に密かに書き進めていた。
舞台を昭和35年にしたのは、私が生まれる10年前ではあるが、ドラマ等で見たレトロな雰囲気に惹かれていたからだ。当時の生活についても図書室で調べ、事件や流行曲、本編でバードマンが工事現場で働くシーンのため、日雇いの「失対作業員」についても調べたりした。
後年、アニメの『キテレツ大百科』でやはり昭和35年にタイム・トラベルするという話が放送された時は正直に言って悔しかった。
中学3年の時に執筆した小説には、カクヨムに発表した『自分、みいつけた』『ひな祭りは記念写真で』の原型となった話の他に、未発表のSF小説が一作ある。この話もリライトしてカクヨムに発表したいと考えているが、もうしばらく先の話になりそうだ。
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