僕と如月さん

@rurusanjo

第1話

「この話は10年前の出来事である」


僕は、友達が極めて少なかった。

いや、いなかったと言っても過言ではない。

だから、そんな僕が何故こんなことに巻き込まれたかはさっぱり分からなかった。


ある日の事、僕はいつも通りの生活を送っていた、その日はいつも通り朝、学校へ向かい、そして授業を受け、帰りに少しゲームセンターに寄って帰ろうとしていた時である、

ゲームセンターから出て少し遠くの所から


「誰か救急車を!!」


と叫び声が聞こえてきた、声が聞こえてきた場所に目をやると、制服を着た女の子と地面に横たわっている中学生くらいの男の子そして倒れているバイクとそのバイクに乗っていたであろう男の人が目に飛び込んできた、その時僕は他の人が救急車を呼ぶだろうとスマホをポケットから取り出さなかった、なんなら聞かなかった事にして帰ろうとしていた、しかし、周りに人が居ないことに気づいてしまった僕は、呼ばなかったらという罪悪感?に負け、ポケットからスマホを取り出し救急車を呼んだ、そこから先は普通に救急車とパトカーが来て、少し警察と話し、帰宅した。

多分事故であろうその出来事の後のことは知らないまま。



その出来事から1週間がたった日の事、何も変わらない日常を送っていた僕に、この学校で1番美しいと言われている如月 未来が話しかけてきた、最初は自分に話しかけられているとは思っておらず、スマホでY○uTubeを見ていた僕に如月 未来は


「あ、あの少しお時間よろしいでしょうか?」


と、僕を覗き込むようにして話しかけてきた、何故この僕に?と、僕は固まってしまった、見ていたY○uTubeは自動再生を始めようとしていた、そのタイミングで如月は


「あの、話よろしいでしょうか?」

と、もう一度聞いてきた、僕は少し考え、

「人が居ない所ならいいですよ」


と、言った後、いや、何言ってんだ僕は!!と心の中で叫んだ、何言っているんだ僕はこれじゃ告白を期待しているみたいじゃないか、友達が全然いない僕は変な考えをしていた、


「人が居ない所,,,ですか,,,」


僕は、ですよね突然人が居ない所に連れてこうとする人意味わかんないですよねと、早口で、心の中で呟いた、


「い、いや、別にここでもいい,,,」

と、僕が言ってる途中に

「では、旧校舎の裏庭に行きましょう」


と、彼女は言った、僕はもうどうにでもなれと、半ばヤケクソで頷いた。



裏庭についた僕達、直ぐに彼女が口を開いた


「突然、すみませんね、実は話したいことがあって」

「ぜ、全然良いですよ、暇でしたから」

「なら良かったです、では、本題になりますけど、あの時はありがとうございました」


と、彼女は頭を下げながら僕に言った、僕はえ?なんの事?と思い


「えっと、何のことでしょうか?」

「1週間前に救急車を呼んでいただいたことです」


と、彼女は言った、僕は、あ!あの事ね!となり


「いやいや、全然いいですよ、ただこのままじゃ罪悪感で夜眠れないな〜ってくらいの感覚で呼んだんで、だから全然気にしなくて大丈夫です」


と、早口かつ妙に裏返りながら言った、彼女は、


「いえ、全然気にします、あの時呼んでいただかなかったら、私の弟は死んでしまっていたかも知れません」

「そ、そうですか」


ぇぇええ!!あの時倒れてた男の子如月さんの弟だったのぉ!!と、僕は驚きながら、


「弟さんは、今元気なんですか?」


と、何故か聞いた、彼女の表情は暗くなり、


「命は取り留めたものの、まだ意識不明の状態です」


泣きそうになりながら、彼女は言った、


「あの時、私がよそ見をしなければ」


彼女はついに泣き出してしまった、

僕は、突然目の前で学校1の美女が泣き出し、訳が分からなくなり、混乱した、何故か、僕は彼女の事を抱きしめてしまった、彼女は最初こそは驚いたもののその後は僕の胸の中で泣き止むまで、身を委ねてきた、僕の湿った胸から彼女が顔を上げるのに10分ほどかかった、


「すみません、突然泣いた挙句慰めさせてしまって」


と、申し訳なさそうに彼女が言った、


「いやいや、こちらこそすみません、突然抱きしめてしまって」


と、僕が言うと、


「いえ、あなたに抱きしめて貰えて私は嬉しかったです」


僕は、えぇ!?と思い、


「いやいや、こんな不細工な僕から抱きしめられたら不快でしょ!?」


と、自分でも悲しくなるが事実なので言った、


「いえ、顔は関係ありません、あなたの事はこの1週間見てきましたけど、すごく優しい方だと思いました、そんな優しい方に抱きしめて貰えて私は凄く嬉しかったです」

「え?1週間見てたって?え?見てたんですか?」

「はい、弟の為に救急車を呼んでくださったあなたがこの学校の制服を着てらっしゃったので、少し調べさせてもらい、この1週間観察していました」


僕は凄く恥ずかしくなってきた、


「ぼ、僕変な事してませんでした!?」

と、この1週間を振り返りながら聞く、

「変な事はしていませんでしたよ、安心してください」


と、微笑みながら彼女は言う、僕はその笑顔に見惚れてしまう、


「どうしたんですか?」


彼女に、そう言われ、


「い、いや、見惚れていました」

「ふふっ、見惚れるほど、可愛くありませんよ」

「そんな事言ってたら、敵を作っちゃいますよ!!」


と、僕は注意した、


「もう既に、いるかもですね」


彼女は、反省しているようには見えなかった、まぁ、彼女は別に気にしていないのだろうと思い、それ以降僕は何も言わなかった、

そして休み時間終わりのチャイムがなる、


「あ、遅刻ですね」

「そ、そうですね」

「このまま、サボりますか?」


と、彼女は半分冗談で提案してきた、


「いや、授業受けましょう」


僕は即答し、そのまま僕達はそれぞれの教室へ向かった。

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