【特別編】あいざわくんは愛さない ~好きだった幼馴染に裏切られて恋愛感情を失くした少年に幼馴染はもう一度好きになってほしいそうです〜 バレンタインデー特別編
愛上夫
特別編 その甘さに包まれて
※ バレンタインデー特別編
こちらは私が連載させていただいております作品の特別編となります。そちらも合わせて読んでいただけると幸いです。
これは、龍巳と春花がまだ中学1年生だった頃の物語。
2月13日 バレンタインデー前日の、その夜。
ほのかに甘い香りが漂うキッチンで、春花は緊張した面持ちでそれに向き合っていた。
「あとはこれで……よしっ、完成!」
そう言って私は、満足げに出来上がったばかりのチョコレートを見る。
チョコペンで〝Happy Valentine〟と書かれたハート型のチョコ。
たっくんが好きな、少し苦めのチョコレートにしてある。
毎年作っているのだが、今年は中学生になったということもあり、少し気合を入れて作ってみた。その出来栄えは中々のもの。
そしてそのチョコを、綺麗な柄の箱に入れてラッピングする。
あとはこれを、明日の放課後に彼に渡すだけ。
果たして彼はどういった顔で受け取ってくれるのだろうか?
「……えへへっ」
きっといつもどおり、優し気な笑顔を向けて「ありがとう」そう言って受け取ってくれるだろう。
その場面を想像すると、思わず顔がにやけてしまう。
するとそんな私の後ろから――。
「春花、変な顔してないで早く寝なさい」
「――っ!?」
私を呆れた目で見てくるお母さんが、早く寝るよう促す。
「おっ、お母さんっ!? い、いつからいたのっ!?」
「あなたがチョコレートを作り始めた時からよ。楽しそうに作ってたから、声かけにくかったわ」
「~~~~っ!」
私は赤面して俯いてしまう。
最初からということは、私が鼻歌交じりで作っているところや、彼の名前を呼びながら作っているところも見られたということだ。
「もっ、もう私、寝るっ! お、おやすみっ!」
私はその恥ずかしさに耐えられず、逃げるようにキッチンから飛び出す。
するとお母さんがその背中に。
「おやすみなさ~い。あ、チョコ冷蔵庫の中に入れておくからね~」
と、少し抜けた声をかけてきた。
そしてその晩――。
「……ね、眠れないっ」
私は、緊張と羞恥心で全然眠れなかった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
翌日の放課後。
「はい、たっくんっ、これ!」
私はいつもの公園で、彼にチョコを手渡す。
それを見た彼は「そういえば」と言って今日がバレンタインデーだった事を思い出し、次いで「ありがとう」と言って笑いかけてくれた。
私もそれを見て、同じように笑う。
「毎年ありがとう春花。開けてみてもいいか?」
「うんっ」
私が頷いたのを見て、彼は包装紙を広げて中身を見る。
「おぉ、今年はまた随分と手が込んでいるな」
「うん、たっくんに、喜んでもらいたくて」
私は少し照れながらそう言う。
それを見て彼は、微笑みながら頭を撫で、優し気な声をかけてくれた。
「……ああ、嬉しいよ。だが、こうも綺麗だと、食べるのがもったいないな」
「えぇ、折角作ったんだから、食べてくれないと……それに、また作ってあげるからっ」
そう言って私も微笑む。
……そう、また来年も作ろう。
来年だけじゃない、その次の年も、また次の年も、その先もずっと……。
だって、ずっと一緒にいるって、約束したんだから。
私の言葉を聞いて、彼は……。
「あぁ、そうしたら、来年も頼むよ」
そう言って、カリッとチョコを口にした。
そのチョコのほろ苦い味とは違って、胸やけを起こしそうなくらい甘い雰囲気に包まれながら、私は思う。
……あぁ、こんな時間が、いつまでも続くといいな。
後書き
ここまでご覧いただき誠にありがとうございます。
こちらの特別編は本編の第2章完と同時にそちらにも載せさせていただきます。
またこの特別編をご覧になってみて、本編の方も気になる、と思っていただければそちらも合わせて読んでいただけると幸いです。
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