第35話 密命と畑作り
「なっ!!私が見えているのですか!?」
「無論だ、その程度の魔法なら看破できる」
「自分で言うのもなんですが、私はこれでもこの国で最高位のアサシンなのですが・・・」
アサシンは“解除”(キャンセル)、とプライドを傷つけられたように姿を現した。
このアサシン言いようを見るに国王の懐刀といったところか。
「勿論、君は素晴らしいアサシンだ、尾行も完璧だった」
「後を付けていた事までッ・・・!!どうして分かったのですか!?」
本当は、パッシブスキルの効果で目に入っただけなのだが・・・強いてアドバイスするなら、そうだな・・・。
「君は隠密魔法に頼りすぎているのではないか?」
「ッ!!?・・・恐れ入りました、貴方が只者でないことは十分に理解しました」
図星を突かれたらしいアサシンは観念したのか、その場で片膝をつき本題を伝えてきた。
「実は、ヴァルディ様に国王様からの密命をお伝えするために参りました」
「密命か・・・その内容は?」
その内容は実に簡単なことだった、何者かに殺害された男爵の館を探索してほしいとの事だ。
派遣していた衛兵と個人的に雇われたらしい傭兵が全滅しており、さらに人間では考えられない規模の足跡が見つかったので辺りに危険生物が潜んでいる可能性が高いと考え俺に密命を出してきたらしい。
「では失礼します、密命の件はくれぐれも外部には漏らさないようにお願いします」
「了解した、明日にでも出発すると国王陛下に伝えてくれ」
「承知しました、では・・・」
そう言うとアサシンは再び魔法で姿を消し去っていった・・・とりあえず明日は奴隷の取引記録を保存してある村へ向かうか。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
次の日俺達は1ヶ月ぶりに村を訪れることになった、“転移門”(ゲート)で村の前に転移したのはよかったが一瞬、転移先を間違えたのかと思うほど見違えていた。
「ヴァルディ殿!!これは・・・!?」
「ヴァルディさん、私・・・昨日は飲み過ぎたみたいニャ!なんだか村がすごいことになっているように見えるニャ!」
ノワルに関しては現実を直視できていないようだ。
「ボク達がしばらく来ていない間にすごいことになっていますね・・・」
「私、ノワルさんがああなっちゃうのも分かる気がします・・・」
「すごい・・・」
リゼ達が言うように俺もこれには驚いた・・・多少の手助けはしたがここまで村が発展したのは間違いなくシグの手腕がいいからだろう。
「あれは騎士様!?」
「なんだって!?戻ってきて頂けたのか!?」
「お仲間のリゼ様たちもいらっしゃるぞ!」
どうやら村人達に気付かれ始めたようだ。
村の入り口をすぎ少し歩くと村の端っこで村人達が集まり何か困った様子で話し合っている・・・何かトラブルか?
「あ・・・騎士様!お久しぶりです!お元気そうでなによりでございます」
「君たちも元気そうで何よりだ、ところで何か困っているのではないか?」
「じ、実はこの村に畑を作ったのですが、やはり土に栄養が無いようで作物が育たず困り果てていたのです」
一応アイテムで“肥料”と“肥沃な土”というアイテムが存在する・・・どちらもゲーム内で野菜などを育てるためのアイテムだ。
農業のことはよく分かっていないしとりあえず試してもらうか。
「なら、このアイテムを使ってみてくれ、農業のことはよく知らないのだが使えそうか?」
「!?こッ、この土は・・・こんなに質のいい土は見たことがありません!」
「これならこの村の土と混ぜて使っても良質な作物が育つやもしれません!!」
やはり、ゲーム内のアイテムは質が相当いいらしいな・・・これで問題は解決か。
「騎士様、土はわかるのですが・・・こちらの物はなんでしょうか?小さい粒のようですが、こちらも何かのマジックアイテムなのですか?」
「いや、このアイテムは肥料だ、土と混ぜて使う」
「肥料ですか!?このいい匂いのするものが・・・流石は騎士様です!我らが知らないような物を気持ちよく分け与えてくださるとは!感謝いたします!」
「礼には及ばんよ、では、私達は村長の家に向かうとしようか」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「シグ殿の家もだいぶ大きくなったな、早速入ろう・・・どうしたリゼ殿?緊張しているのか?」
「えっ?い、いえそういう訳ではありませんが・・・むぅ・・・」
「?」
具合が悪いのだろうか?でも顔色は悪くないようだけどな・・・。
「どうしたニャ?リゼ?もしかして月の・・・ニャッ!?????」
「ち、違う!!きっ、貴様!!!よりにもよってヴァルディ様の前でそのような事をッ!!斬られたいのか!!!!!!」
今のはノワルが悪い・・・シグを呼ぶ手間が省けたか、リゼの恥とトレードではあるが。
「な、何事ですか!?ケンカは・・・ヴァルディ様ッ!?それにリゼ殿!」
「やあ、シグ殿しばらくだな」
「は、はい!とりあえず中へお入り下さい!」
その後、密命の事を伝え、保管しておいた奴隷取引の書類を受け取り、それと同時になにやら村の運営の事で困っていると相談を受けることになった。
この感じだと、またしばらくこの村に滞在する事になりそうだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます