第34話 決着と仲直り



「ハアッ・・・!!今から私の最高威力の技を使うけど・・・もちろん優しい騎士様は避けないでくれるわよね?」


「なるほど、ギルドで決闘した時の記録でも見たか・・・私の性格をよく分かってくれているらしい」


 かなりの自信だ、考えるに今まで誰も耐えた事ない“必殺”だろう・・・”彼女の本意”は分かっている。


 なら受け止めるしかないな!


「こい、君の”本意”に応えて見せよう」


「そう・・・全部分かっていたのね?いいわ!貴方の力!試してあげる!!」


「“剣士の円舞”(ソード・オブ・ロンド)!!!」


 !?なんだと・・・!最強スキル・・・もとい、お手軽ブンブンスキルとして名高い“剣聖の円舞”(ナイト・オブ・ロンド)・・・の下位互換スキル!


「ハァッ!!終わりよッ!!」


「フッ!!」


 俺がスキルの発動に合わせて剣を振り切ると“パキン”と金属が割れたような音が鳴り響きリゼの姉・・・その剣は半ばから折れていた。


「今のを見切ったの・・・?ありえないわ・・・」


「勝った・・・?あの姉上にヴァルディ殿が・・・?」


「ヴァルディさん!すごいニャ!!!近衛騎士長に勝つなんてニャ!!」


「これで君のお眼鏡には叶ったか?」


「・・・ええ、私の完敗よ・・・私の妹を貴方に任せていいかしら?」


「初めから勝つ気は無かったのだろう?」


 リゼの姉にそう問いかけるとため息混じりに肯定した。


「全てお見通しってわけね・・・でも一つだけ間違っていることがあるわ、私は本気で貴方に勝つつもりだった」


「でも、勝てる気はしなかったわ・・・ただの兵士にはわからないかも知れないけれど、国王陛下の前で見せた貴方の殺気はこの私がすくんで動けない程のモノだったしね」


「それにずっと手加減していたのでしょう?その上、私を傷つけないように気を付けながら戦っていた・・・戦いにすらなっていなかった」


「じゃあね、リゼ・・・せいぜい死なないようにね?」


 本当は妹であるリゼの事が心配で仕方がなかったのだろう、そこで俺は今日この国の貴族を敵に回した。


 だからわざわざ勝てない相手と知りながら決闘を申し込んだ・・・妹を守るだけの力があるのかを確かめるために。


「あ、姉上・・・」


「ヴァルディさん・・・なんとかしてやれないかニャ・・・?」


「ヴァルディさん、ボクからもお願いします」


「ヴァルディさん・・・」


「なんとか・・・なる?」


 寂しそうに去っていくリゼの姉の背中を見てノワル達は各々、なんとか出来ないかと俺に聞いてくる。


 フフ、全くこの子達はお人好しだ、嘘とはいえ罵倒されたというのに・・・元からなんとかするつもりだったがそんな目で見られたらなにもしない訳にはいかないじゃないか!


「分かった、なんとかしてみよう」


「君、ちょっと待ってくれるかな?渡したい物がある」


「え?何かしら?」


「どうやら私の仲間たちは君とリゼ殿に仲良くしてもらいたいようでね、これをあげよう」


 俺はアイテムボックスから丸い球体を二つ取り出し片方をリゼの姉に渡す。


「宝石かしら?だいぶ高価な物みたいだけれど・・・」


「それに話しかけてみてくれ」


「?『こうかしら』!!!?何!?」


「これは、“通信石”と言ってな、どんなに離れていても対になる石を持っていれば声と姿が写し出される」


「これで君たちはいつでも会話できる、王宮仕えの近衛騎士長となれば会いに来る時間など取れないだろうしな」


 信じられないというような顔で・・・しかし今までの無愛想な表情というわけではなく嬉しさを滲ませた笑みを浮かべ感謝の言葉を伝えてきた。


「貴方、本当に不思議な方・・・ありがとう、私は国王に仕える身です、貴方に仕える事は出来ませんがそれ以外でできる事ならなんでも致しましょう」


「私は、アイナ・クレールと申します、本当にありがとう」


「アイナ殿、礼なら私の仲間達に言ってくれ、私を動かしたのは紛れもなく彼女達だからな」


「皆様もありがとうございます、先程の無礼お許し下さい」


「リゼ・・・困ったことがあったらお姉ちゃんに言いなさい、分かったわね?」


「はい!姉上!」


 アイナはリゼを抱きしめながらそう言うと耳元で何かを呟いた、なんだ?よく聞こえなかったな。


「リゼ、あんまりモタモタしているとあの騎士様はお姉ちゃんが貰っちゃうわよ(ボソッ)」


「あ、姉上ッ!!!!!!」


「フフッ!またね!」


 これで王宮での波乱は終わった、すんなり終わればいいと思っていたが思った通りにはいかなかったな。


 ルルがもう限界だったようであの後すぐに寝てしまった・・・すっかり陽が沈みかけている街でルルをおんぶしながら帰路に着いた。


 そして尾行してくる影が一つ、流石に誰も気づいてはいないようだ。


「ハァ宿屋に帰ってもまだ気は休まりそうもないな・・・(ボソッ)」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「では皆、今日は本当にお疲れ様だった、ゆっくり休んでくれ」


「「「「「はい!また明日」」」」」


 “バタン”


「そろそろ出て来たまえ、何用かな?」

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