文字が躍る戦闘
ふつれ
第1話
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ズバッ と。
無造作に。
奴
が
真
横
に
振
り
抜
い
た
刀
は、
俺の相棒の首を
滑
ら
か
に切り落とした。
何よりも先に、恐怖がやってくる。次は俺がそうなるかもしれないのだ、という恐怖が。
そして、遅れて。怒りがやってきた。
俺の仲間を躊躇いなく殺した奴に。そして、一時でもソイツに気後れした、自分自身に。
俺は深呼吸をする。
彼我の距離は、まだ 十分にあった。
夜闇に濡れる奴の影を、ゆら かが
めく り火がぼんやり照らしている。
今なら、俺が圧倒的に有利だ。
腰の箙――矢を入れておく筒だ――から、
矢を一本、音もなく
すっと、抜き出して、俺は弓にかける。
息を殺して、奴に向けて弓を構えて。 大丈夫だ。奴はまだ俺に気づいていない。
そ い。
の な
まま、 すぎ
弦を引き絞る。 に、力は入れ
照準がズレてしまわないよう
今ならまだ気づかれていない。
間にあう。
俺はゴクリと唾を飲み込んで。
すっと指を
離して
矢
を
打
ち
放
つ。
――そのとき。奴が不意にこちらを見た。 こちらを見た!? 奴の刀が
跳
ね
上
が
っ
て。
飛来した俺の矢を一刀のうちに切り捨ててしまう。
どうしてバレたのか。殺気を出し過ぎたのか。
そう困惑しているうちに
奴
は
俺
と
の
距離を
瞬間的に詰めてくる。
もう一度。今度は俺の目の前で。
奴
の
刀
が
右
か
ら
左
へ
頬に触れる寸前で。それを何 と か弓幹で受け止めて耐えた。
最
小
の
動
作
で
薙
い
で
い
く。
刀と弓で押し合うわずかな膠着状態。
俺が一度引こうと足を動かすと、それに合わせて奴に足を払
わ
れ
て、
体
ご
と
地
面
に
転
が
さ
れ
た。
その隙を逃さず、
―――上から繰り返し 俺
は
―――振り下ろされる さ
ら
―――刀 に
転
―――刀 が
っ
―――刀を。 て
泥
だ
ら
け
に
な
り
な
が
ら
回
避
す
る。
くそ。絶望的な状況。
空間的に上を取られて。
立ち上がる隙は与えられない。
しかも接近戦では、刀の初動に弓は間に合わない。
俺の心は、折れそうになる。
――だが、
こいつは、俺の相棒を殺したんだ。
文字通り一矢報いなければ、俺はアイツに顔向けできない。
だから、何か、しなくては――
俺は、地面を転がりながらも、もう一度腰の箙に手を伸ばす。
矢の束をガッと掴んで。
手に一本だけを残して――。
残りの矢たちを奴に向けて――。
俺の体に覆い被さるように――、
刀を振り下ろしてくる奴に向けて――。
つぶてのように一纏めに投げつける――。
奴が一瞬だけひるんだ。
その隙を逃さず、俺は弓に、最後の一本の矢を番える。
起
き
上
が
る
間
も
惜
し
ん
で。
奴はすぐに体勢を立て直すと、再び刀を振り下ろしてきた。
弓
を
引
き
絞
り
な
――俺は根性で左手を突っ張って。 が
ら
そ
の
刀
を
受
け
る。
腕
が
砕
け
る
ような
衝撃
に
視界を チ カ チ カ とさせつつ、それを堪えた。
来た。
今だ。
今しかない。
奴は俺の弓に刀を振り下ろした直後。
すぐには回避に移れない。
一方の俺は、既に弦を引いていて、後は手を離すだけ。
左手は痺れて感覚がないが、それでも。
この至近距離で矢を外すはずがない!!!
そうして俺は、直上へ向けて。一矢を打ち放った―――
文字が躍る戦闘 ふつれ @ffuture23
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