第2話 陰キャの俺、幼なじみの家を訪問する
俺の名前は友瀬ミチル、何の取り柄もないアニメ好きの陰キャボッチ野郎だ。
でもそんな俺には大切な幼なじみがいる。
彼女の名前は北条アヤネ、家は隣同士で幼稚園からの頃からの付き合い。恋愛小説が大好きで少し地味な女の子だ。
目立たないけれど顔立ちは整っていて美人といってもいいだろうと思う。
そんな彼女に俺は高校入学と同時に告白し、晴れて恋人同士の関係となった。
きっかけは小中学校と奇跡的にずっと同じクラスだった彼女と高校では別のクラスになってしまったことだった。
高校になってぐんとキレイになった彼女が他の男に取られてしまうのではと焦った俺は入学式の後、一緒に下校している最中に勢いのまま告白した。
「うれしい……、わたしもみーくんのこと……ずっとずうっと大好きだったの♡」
アヤネは真っ白な頬を赤く染めながら俺の気持ちを受け入れてくれた。
――――それはまさしく俺の人生最高の瞬間だった。
昔から知っている間柄ということもあり俺の両親は大喜びで俺たちを祝福してくれた。
少し地味だけれど隠れ美人として密かに人気のあるアヤネだったので変な噂になって目立ちたくなかった俺は、学校ではあまりアヤネとはベタベタしないように注意してもいた。
そのおかげもあって俺たちは変に注目されることもなく恋人同士としての関係をゆっくりと深めることができた。
俺にとってはただただ楽しいだけの幸せな一カ月が続いた。恋人として経験する全てが新鮮だったし二人で過ごすことは俺にとって夢のような時間だった。
順調にデートを重ね、心の中ではそろそろファーストキスも……なんて思ってもいたんだ。
そう今日のこの時までは……。
☆☆☆☆☆☆
あれからどれくらいの時間が経過しただろうか、俺は今アヤネの家の前に立ちつしている。辺りはもうすっかり暗くなってしまいポツポツと電柱の灯りがともり始めている。
俺はぶるりと頭を振り両手で自身の頬を叩き気合を入れる。
少なくとも俺は直接アヤネに会い、二階堂とのことを確かめなくてはならない。
それだけが唯一今の俺に出来ることなのだから。
俺は震える指先でインターフォンのボタンを押し、応答したアヤネの母親に自分の名前を伝える。
数十秒後、ガチャリと玄関の扉が開きアヤネの父親が顔を出した。
アヤネの父親はそのまま扉の外に出て来て、アヤネが会いたくないと言っていることを俺に告げた。
「これ以上ストーカーみたいな無様なことはするんじゃない。私は最初から君のような不出来な男がアヤネに近づくことには反対だったんだ。今のアヤネには立派な彼氏がいるんだから君はもう二度とうちの娘に近づくんじゃない。いいな。わかったらすぐに帰りなさい」
アヤネの父親は憎々し気な目でこちらを睨みつけ一方的にそうまくし立てると俺の鼻先でバタンと音を立てて乱暴にドアを閉め家の中に戻って行った。
どうやらアヤネの父親は勉強もあまり出来ず、マンガやアニメばかりにウツツを抜かしている俺が娘と親しくしていることに苦々しい思いを抱いていたようだ。
俺はあまりのことにその場に茫然と立ちつくしていた。
その後俺は重い足取りで家に帰ると食事もとらずに部屋へと閉じこもった。
俺は真っ暗い部屋でベッドに寝転んでただただ天井を眺めていた。
でも俺にとって最悪の一日はまだ終わっていなかった。
☆☆☆☆☆☆
どれくらい時間が経ったのだろうか……、LAINの着信音が鳴ったので俺はスマホを手に取り、メッセージを確認する。
そこにはアヤネからの無機質なメッセージが表示されていた。
『わたしは友瀬君と付き合っていたつもりはありません。今わたしには大事な彼氏がいるのでもう二度と近づかないでください。はっきり言って迷惑です』
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