第8話
「おせぇ……」
酒場に着くとカムさんの苛立ちを隠さない一言につい笑ってしまう。
「すみません」
「いや、リーシャから話は聞いている」
「んで?その女は誰だったんだ?」
「可愛かったのよね?」
ファストさんがフォローするその横からカムさんとリーシャさんが聞きたくてしかたがないという様子だ。
「ははは……そんな良い話ではありませんでしたよ」
「聞かせなさいよ」
「ええ、彼女は………」
「つまり、なに?ナイトメアだから、捨てられて?その妹を庇ったからお姉さんをいらない者として差し出し?今度はその子ってこと?」
「そういう事だな」
「ふざっけんじゃないわよ!!!!」
机が壊れるんじゃないかと思うぐらいの音を立ててリーシャさんが咆哮を上げるので僕が落ち着かせる為に立ち上がる。
「リーシャさん落ち着いて落ち着いてください」
「そんな事聞いて落ち着けるようなエルフだと思ってんの?」
「冷静になれ、お前だけでその神とやらをやれるのか」
「ええ…ええやってやろうじゃないの!」
「今年までに4人は消えていても、か?」
「よに…?なに?どういう事よ」
氷のようなファストさんの言葉にリーシャさんはむしろ燃え上がってしまったが続けられた言葉に怪訝な顔をする。
「たとえ守りの剣の加護があったとしても冒険者一行の一つは派遣されているはずなんだ。普通は」
「それがあの村長の野郎、今は居ないと言いやがる」
ニンジンを咥えながらカムさんが何でもないような事を言うけれど確かに先任の冒険者くらいはいてもおかしくない。
「おかしいと思って村人に聞いてみたら例のソレが住み着くと同時期に馴染みの冒険者一行が辞めたと村長が宣ったらしい」
「それって」
僕も思わず息を呑んでしまう。
「十中八九、アレが平らげた」
「だな」
「ただ、下手な事は言うなよ。俺たちも前任者の二の舞だ」
村ぐるみの隠し事かもしれない事に僕もリーシャさんも動揺を隠しきれない。
「じゃあ、私はどうしたら良いのよ」
「大丈夫だ。お前はいつも通り前を張ってくれれば問題ない」
「細けぇこたぁ俺たちはで考えるよ」
「まあ、それでいいならいいけど…」
本当に僕たちは大丈夫なのだろうか。
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