第二回:本編から削った設定と書く程ではないキャラの裏話色々。

* ドンフォン中尉について。


 ドンフォン中尉こと、ジョルジュ・ドンフォンはローフォークの忠実?な副官です。

 ローフォークとフランツ。この二人との出逢いは、ドンフォンが幼年学校の第一学年にまで遡ります。この時のドンフォン少年はやさぐれていました。

 侯爵家に生まれていながら、七男というどんなに足掻いても越えられない長幼の序の壁。しかも、両親は男ばかりに飽きて我が子に関心は乏しく、七男誕生から間も無く待望の女児をもうけたことで、いよいよ無関心に。ドンフォンとすぐ上の五男六男は最低限の読み書きを学ぶ事以外は、ほぼ放置の状態でした。


 両親の愛情を独り占めする妹に嫉妬して意地悪をしたり、使用人達に悪戯をするのは定番のやさぐれ行為ですが、礼儀作法を学んでいないドンフォンは使用人達からも笑われて、大きな屋敷に居場所はありませんでした。

 これを由々しき事態!と大慌てで対処したのは、王宮近衛連隊に勤める長兄です。

 長兄は遅まきながら弟達に家庭教師を付け、親身になって話をし、少しずつ弟達は落ち着きを取り戻してゆきます。しかし、ドンフォン少年の短気は治りませんでした。幼年学校に入学した少年は、些細な事が切っ掛けですぐに喧嘩をします。相手が上級生でもお構いなしです。そして、とうとう少年はローフォークとフランツに喧嘩を売ってしまいます。


 二人がかりでボコボコにされました。

 ローフォーク達は卑怯ではありません。ドンフォン少年が手段を選ばず滅茶苦茶だったのです。ローフォーク達もボロボロでした。

 これを切っ掛けに、ドンフォンは二人に懐きました。喧嘩の後の対処の仕方が他の学生達とは違ったからです。ひっくり返った(体力の限界)三人は、ちょっとだけ話をし、二人はドンフォンがやさぐれている理由が、誰にも見てもらえない寂しさだと知って、友達になる事を約束しました。それから三人は一緒に行動する様になります。勿論、腹痛事件の思い出も共有しています。


 それから数年後。暗殺事件でローフォークが王宮庭園を追放された時、ドンフォンは幼年学校の最終学年でした。やがて士官学校に戻ってくると信じてローフォークを支えるだけでなく、七男という立場から自立も考えていたドンフォンは軍人を志して進路を取っていましたが、ここでも事件が起こります。

 両親はドンフォン少年を神学校に入れようとしたのです。


 ジョルジュは激怒した。


 一先ず丁重に両親と話をしますが受け入れてもらえず、本来の気質が爆発します。怒って暴れて破壊します。

 両親の救援要請を受けた長兄には、泣いて駄々を捏ねて懇願しました。

 末弟の気持ちを察していた長兄は、逆に両親を説得してくれました。今でもドンフォンは長兄に頭が上がりません。むしろこの長兄こそ自分の親だったら良かったのに、と思っているくらいです。


 かくして、ドンフォンは無事に士官学校に入学出来ましたが、ローフォークにはずっと無視され続けました。ムカつきましたが、我慢を覚えました。

 第二連隊に入隊を希望し、やがて、大隊長となったローフォークの副官に選ばれました。ドンフォンはやっとローフォークを支える事の出来る立場につけて、嬉しいと思っています。

 ちなみに、彼は王宮庭園の実家を出て、王都の仕立て屋さんの二階で間借り生活です。




* 一話の途中でマートンに殺された黒装束の青年。


 第一話でコール家襲撃後、マートンによって殺害された彼はトビアスの貧困階層出身の青年です。兵卒としてトビアスの師団に入隊しましたが、働き過ぎで身体を壊した両親の治療にお金がかかり、金銭に困窮していた時、マートンに声をかけられました。

 当初は見張りなどの簡単な役目でしたが、やがて殺人も要求されます。ローフォークは彼の姿に自分を重ねていました。だから、コール家襲撃後に彼を逃そうとしたのでした。




* 王宮庭園の事件後、ジェズを庇うフランツ。


 実は、エッセン暴走胸糞事件(作者はそう呼んでいます)の後で、フランツと伯爵が国王へ弁明するシーンを書いていました。伯爵が肝心な部分を省きつつも、じわじわと公爵を追い詰める場面でしたが、私的に最も書きたかったのはシュトルーヴェ伯爵とその嫡男が、一介の兵卒の為に国王に頭を下げるシーンでした。

 二人がどれだけジェズを大事に思っているか、どんなに自分達に都合が悪くても、決して少年を見捨てはしないのだ、という事を表現したかったのですが、その後のジェズの反抗期?展開もあってカットしました。

 フランツがプライベートでは他者の心の機微に鈍いと言うところも表現したかったし、それをアリシアにバッサリ一刀両断してもらいたかったと言うのもあります。




* モンジュール教会回で伯爵は何をしていたのかの話。


 五話でジェズの奉仕活動の為に教会に赴きましたが、シュトルーヴェ伯爵はいません。

 このエピソードも用意していましたが、なんか違うなあ、と思ったので削りました。ここで用意していたのは、みんなで馬車に乗り込もうとした瞬間、伯爵がギックリ腰をやってしまう話だったのですが、なんか違うなあ(2回目)、と思って、作中ではお仕事で留守にしているという設定です。

 ギックリ腰の代替えとして、七話で脛を打つ話に変更しました。(とにかく痛い目に遭わせたかったので作者の欲望の犠牲になってもらいました)

 カッコ良い、頭が良い、策略家、隙が無い、というイメージを持っている方もいらっしゃったかもしれませんが、伯爵もフランツも、家族の前ではカッコ悪い事をいっぱいします。どうしようもない人達です。




* エリザベス・コールについて。


 この物語の主人公です。

 エリザベスの出自については番外編『ジェズ•シェースラー』で、両親がシュテインゲン王国出身でグルンステインに逃げてきた、という設定になっています。なので、血統という観点からはエリザベスは純血のグルンステイン人ではありませんが、国籍はグルンステインです。

 でも、元々一つの大きな民族が分裂して各地に築いた国家を再統合しよう、というのが『聖コルヴィヌス大帝国』の建前なので、民族的血統は同じです。

 母エレーヌが富裕層上層の出身なので、実は礼儀作法に関しては徹底的に仕込まれています。そして母の趣味である刺繍も、結構な腕前です。しかし、エリザベスはちまちました作業が性に合わず、頻繁にお稽古を逃げ出して叱られていました。

 得意なものは乗馬。脚の速さも自慢です。生まれつきアスリートの走りを身に付けています。あと、人の顔と名前を覚える事です。

 苦手なものは、大きな声で怒鳴る人。それと芸術関係全般です。特に絵がダメです。脅威の画伯で度々周囲を戦慄させます。こればかりはアリシアも庇えません。ですが、本人は上手くはないけど下手だとも思っていません。

 エリザベスの絵を判定出来るのはジェズだけです。




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