登場人物 参

*グラッブベルグ公爵家

•フィリップ・ベルナール・グラッブベルグ

……グラッブベルグ公爵令息。10歳。くすんだ金髪。飴色の瞳。次期グラッブベルグ公爵。母は現王フィリップ14世の娘・アデレード元王女。結婚に際して母が権利を放棄したので王族ではなく、王位継承権も無い。ローフォークを兄様と慕い、いつか一緒に肩を並べて王国や王家を助ける立派な軍人になりたいと思っている。素直で活発、恐れ知らずな所があるが、未熟ながらも状況を察知し場に応じた対応を取ろうとする分別もある。


・アデレード・アルフォンシーヌ・グラッブベルグ

 ……グラッブベルグ公爵夫人。フィリップ14世の長女。42歳。母が男爵令嬢であり、自分も女児であった事から多くの貴族に軽んじられて来た。しかし、叔母で王妃付き女官長のシャイエ公爵夫人に激烈に可愛がられ、彼女が信頼する貴族女性達が侍女官として付けられ守られていた。この侍女官の中にローフォークの母オーレリーがおり、暗殺事件が起こるまでオーレリーを重用して来た。伯爵夫人マルティーヌもその内の一人。10代の時に他国へ嫁ぐ話があったが、天然痘に罹り死にかけた事から白紙に。顔に痘痕が残った為に嫁ぎ先が見付けられず、娘を不憫に思っていた父王により褒賞という形でグラッブベルグ公爵に降嫁される事になる。


・アニエス・フィリッパ・グラッブベルグ

 ……グラッブベルグ公爵令嬢。8歳。くすんだ金髪。飴色の瞳。顔立ちは グルンステイン家の系統。兄ベルナール同様、母が王女の権利を放棄したので王族扱いではない。性格は母に似て引っ込み思案だが、親しくなった人には恥ずかしがりながらもきちんと話し掛ける事が出来る。物心ついた頃から父親に王妃になる様に言い聞かせられていたので、そうなると思っていたが、まだ子供なのでその重要性は理解していない。ローフォークをカレル兄様と呼ぶ。



*グルンステイン王家とその血筋

•フィリップ・エドゥアール・グルンステイン

 ……フィリップ14世の一人息子。フィリップ・シャルルの父。先の王太子。享年30歳。十一年前の事件で妻と共に暗殺された。父王譲りの軍人気質、母譲りの美貌で国内の人気は絶大だった。国力も相俟って、同盟国からも政略結婚の打診が後を絶たないくらいにモテた。それ故に、暗殺された直後にはレステンクール人や任務を全う出来なかったローフォーク家が集中砲火を浴びる事になった。


・フィリップ十三世

 ……フィリップ14世の実父。軍人気質の戦闘民族的思考の強いグルンステイン王家の中で、珍しく実務派の国王。父王オーベールが早逝した事により若くして王位に就いた。この王の即位をもって、グルンステインとファブリスは正式に一つの国家となる。先先代から立て続く戦争により戦費が嵩み、財政が逼迫していた王国の組織を大改革。貴族だけでなく平民を職業兵士として取り立てる事により、軍事力と国内の治安維持力もアップ。士官学校のみならず、芸術学校、大学、専門職学校の設立も行い、貴族や富裕層に能力の高い平民への奨学金を積極的に奨励。河川、道路の公共事業も専門省を設け技術の向上に努めた。国力の基盤は農業と平民だと捉えていた13世は農業改革も実施し、学者や技術者に最新の農機具の開発と農産物の品種改良も命じた。国費は大幅に嵩んだが、結果はそれを上回る収益の底上げを生む事になる。臆病と謗られつつも、戦争を可能な限り回避して来た影響も大きい。先祖達とは違った勇気を持つ名君。


・フィリップ十四世の叔母

 ……フィリップ13世の妹。兄王の意向を汲み、隣国レステンクールに嫁ぐ。隣国から兄王の改革を支える為に戦争回避に尽力していたので、レステンクール貴族からはあまり好かれていなかったが、兄王を見習い慈善事業に積極的だったので国民には慕われていた。レステンクール包囲戦争の前に死去している。


・シャイエ公爵夫人(フランセット・エリザ・シャイエ)

 ……王族公爵シャイエ家の夫人。夫はフィリップ13世の末弟の息子で従兄妹同士の結婚となる。兄14世の妃は元々フランセットのお気に入りの侍女官で、妹の侍女官に兄が手を付けた事に腹を立てていた。妃となった彼女を周囲が虐めるのに憤慨し、義姉となった元侍女官と王子ではなかった事から軽んじられてきたアデレードを護るために、自ら進んでシャイエ家に降嫁し、臣籍化。王妃が身罷るその時まで王妃付き侍女官に徹した。オーレリーとマルティーヌをアデレードの侍女官に任じたのも彼女。


・マリー王女(マリー・アンヌ・フォントノワ・カラマン)

 ……フィリップ14世の孫娘。王太子シャルルの妹。現在16歳。5歳の時に第二皇子の婚約者としてカラマン帝国へ送り出されるが、実質的には人質。この際、王女としての権利を放棄しておらず、彼女の生んだ子が男児だった場合、グルンステインの王位継承権を持つ事になる。カラマン帝国としてはこれがあったからこそ、グルンステインへ向けた矛を引いた。



*ローフォーク家

・アンリ・ヴィルヘルム・ローフォーク

 ……先代ローフォーク子爵。王宮近衛連隊連隊長。カレル・ヴィルヘルム・ローフォークの父。先祖はファブリス王国の騎士階級貴族。曽祖父の時代にオーベールと縁を持ち、グルンステイン貴族に取り立てられ、代々一族で近衛の長を務める事を認められた。フィリップ13世の行政の大改革でもその地位が変わらなかったのは、それだけ王家から信頼されていた証でもあった。しかし、十一年前の暗殺事件での失態の責任を取り、処刑される。享年47歳。


・クレール・ヴィルヘルム・ローフォーク

 ……カレル・ヴィルヘルム・ローフォークの兄。享年23歳。本来なら彼がローフォーク子爵位を継いでいた。王太子夫妻暗殺事件では近衛親衛隊として指揮を執る立場にいたが、夫妻を守れずに自身も犯人により殺害される。これがローフォーク家の失態とされて、父の処刑と弟と母の王宮庭園追放に繋がった。


・オーレリー・パリス・ローフォーク

 ……ローフォークの母。先代ローフォーク子爵アンリの妻。52歳。紅茶色の髪。水色の瞳。11年前、長男の失敗と夫の処刑により王宮庭園を追放された。フィリップ14世の長女アデレードの侍女官を直前まで勤めており、アデレードからの信頼は厚い。今はベルナールとアニエスの養育係とアデレードの相談相手として王都郊外のグラッブベルグ邸で暮らしている。その為にローフォークは公爵の言う事を聞かざるを得ない状況になっている。



*その他の方々

・フランツの祖父(ギュスターヴ・ルイ・シュトルーヴェ)

 ……フランツの祖父で現シュトルーヴェ伯爵ルイの実父。先代シュトルーヴェ伯爵。厳格かつ野心的。実母はオーベール1世の妹の一人。妻はファブリス女王エリザ=リベットの妹とオーベールの弟の娘。従兄妹同士の結婚となる。自分の高貴な血筋に誇りを持ち、その血筋に見合う能力と地位につくために努力をしてきた。軍務大臣から王国宰相になる。その厳し過ぎる性格から長男ルイとの折り合いは悪く、何かと反目しあってきた。息子がマルティーヌと結婚した時は激怒。息子との仲は拗れるがギュスターヴ自身はマルティーヌをいびる事は無かった。決定的な亀裂はローフォークの父アンリを処刑するように国王に進言した事。


・シュトルーヴェ家の顧問弁護士

 ……伯爵とフランツの中間くらいの年齢。知識が豊富で、領地運営に関しての法的なサポートをしていた。今は伯爵の依頼でコール家の会社の再建に取り組んでいる。


・宝石商の男と妻。公爵に陳情に来た男

 ……センスの良い宝飾品を扱う事で評判だった宝石商の男。しかし、堅実で真面目な商売をしていた為に「旨味が無い」と公爵に騙され、最期には妻と共に惨虐な手段で殺害される事に。陳情に来た男は、この商人から採掘坑を騙し取り、公爵に賄賂を送っていた。


・グラッブベルグ公爵の手下(貴族風の男と下男)

 ……貴族風の男は貴族の子弟。日常的に素行が悪く、勘当された所を公爵に拾われ、面白おかしく犯罪生活を満喫していた。この男の性癖がマートンに影響を与えている。下男は元々王都のならず者の一人。以前から公爵の下で美味しい思いをしていたが、郊外に構えた屋敷に見張り役として下男の仕事を与えられた。


・トビアス師団の記録官と第37連隊の連隊長

 ……比較的、淡々とした記録官。実はコール家を襲った賊の一人。37連隊の連隊長は出世したい。フランツを家柄だけで出世したボンボンと思っている。


・倉庫の怪しい男達……悪い事を考えている男達。実は密輸の……。


・オリヴィエ

 ……倉庫の怪しい男達の口から出た名前。どうやらレスコー殺害と密輸に関係しているらしい。



*オマケの登場人物=番外編

・アントニー・ベッソン

 ……(再紹介)十五歳。第二連隊第二大隊第五駐屯所勤務。ジェズと一番の仲良しで、良く食べるのでジェズより頭一つ大きい。姪が可愛い。


・ジャン・レーン……十六歳。第二連隊第二大隊第六駐屯所勤務。


・ジニー・ベッソン……生後一ヶ月。アントニーの姪。たまにしか会わないアントニーが抱っこすると泣く。

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