第25話 魔力についての結果とお泊り

「・・・」


「お姉様?」


「・・・っは!」


 私が声も出さずにジッとしていたので不思議に思ったのでしょう、サマンサは私に呼びかけました。

 それにより私は自分の世界から帰って来て・・・叫びました。


「パルフェ!そのまま!そのままですわよ!」


「は・・・はい!畏まりました!」


 何故ですかって?そんなの当り前です。


 魔力が見えたからです!


(や・・・やりましたわ!一番見えるかもと思っていた方法で魔力が見えましたわ!・・・相変わらず原理とかは全く不明ですけどね!しかし・・・黄の魔力はパチパチして面白いですわねぇ・・・。黄は雷魔法ですが、魔力からしてこんなかんじですのね)


 私は夢中になってその光景を眺めます。

 パルフェが放出させている黄の魔力は、彼女の体から50cm程の範囲内に幾つも球状の物が漂っている、そんな風に見えました。

 そして面白いのは、球状の魔力の間をまるで雷の様にパチパチと何かが移動しているのです。あれも魔力なんでしょうか?


(ふうぁ~・・・ノワールには悪いですが、黄の魔力は面白いですわ。いくらでも見ていられるかも・・・って、あら?)


 暫くその光景を眺めていたのですが、急にそれはフッと煙の様に消え、何時もの視界へと戻りました。

 一体何故?と思っていたら、申し訳なさそうなパルフェの声が聞こえてきました。


「あっ・・・申し訳ありませんマシェリーお嬢様。魔力を維持できなくなってしまいました・・・」


「あら、そうですの。・・・因みになんですが、魔力をずっと放出しているのって難しいんですの?」


「魔法として放つなら簡単なのですが、魔力のままで操作するのは難しいと思います。・・・そうですよねエリノーラ?」


「そうですね・・・普通は魔力のまま操作と言うのはあまりしませんから・・・。長く放出して操作というのは難しいと思われますマシェリーお嬢様」


「成程、ありがとうございますわ」


 ノワールが難なくやっていたので簡単なのかと思っていましたが、どうやらそうではなさそうです。

 やはり何気にハイスペックですわね・・・とノワールをチラリと見ると、すました顔をしていました。あれはきっと『いえ、難しくありませんが?』とか思っているのでしょう。


(これだから天才は・・・って、今の私も天才でしたわね。という事は私も難なく出来るかもしれませんわね)


 転生前は凡人でしたが、今の私はチートスペックの悪役令嬢、実際にやってみたらきっとノワールみたいな感想になってしまう事でしょう。


(もしかしたら転生物の鉄板である、『あれ?私何かやってしまいましたかしら?』が出来るかもしれませんわね)


 少しおバカな妄想をしてしまったのですが、用もないのに使用人を留めておくのも悪いかと思い、私は使用人達に声を掛けます。


「・・・っと、パルフェとエリノーラでしたかしら?確かめたいことはもう終わったので、もう帰ってもよろしいですわ。今日はありがとうございましたわ」


 取りあえず知りたいことは解りましたし、今日はこれ以上試すのも時間が時間でしたので、魔力の検証については後日にする事にしました。


「「畏まりましたマシェリーお嬢様」」


「またちょくちょく呼ぶかもしれませんが、その時は頼みましたわよ?」


「はい、いつでも御呼びくださいませ。私やエリノーラ、ヘリンダもマシェリーお嬢様の為ならいつでもはせ参じます」


 意図したわけではありませんが、私に友好的な者が増えました。現状私に友好的という者は少ないので、思わぬ収穫です。


「そう、ありがとうございますわ」


「「はい。それでは失礼いたしますマシェリーお嬢様。おやすみなさいませ」」


「ええ、おやすみなさい」


 使用人2人は挨拶をして部屋を出ていきました。それを見送ると、私は手を握ったままのサマンサへと顔を向けます。


「変な事につき合ってもらってありがとうございましたわサマンサ」


「いえ、お姉様の為ならこんな事全然・・・。なんならもっと変な事にだって付き合います!」


「え・・・ええ。まあ今後も同じような事を頼むと思いますので、その時はお願いしますわね」


「はい!」


 一瞬私の頭の中にちょっとあれな考えが浮かびましたが、私は悪くないはずです。だって・・・サマンサったら私の両手を包み込みながらキラキラした目で私を見つめながら言うんですよ?そんな事されたら変な風に考えても仕方ないです!


「ふぅ~・・・サマンサ、お茶でも飲みながらボードゲームでもしましょうか」


 私はクールダウンを図る為とこれからどうするかを考え、ボードゲームでもしようと提案をしました。

 別にお喋りでもいいのですが、まぁたまにはいいでしょう。


「あ、いいですね。私結構好きですボードゲーム。何をやります?私最近チェスも覚えましたよ?」


 私の提案にサマンサは乗ってくれ、私達はボードゲームで遊ぶことにしました。

 私達はテーブルへと移動し、何で遊ぶかを話し合います。


 こうして私達は眠くなるまで遊び、楽しい夜を過ごしました。




 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 





 頑丈そうな石造りの部屋の中は喧騒に包まれていた。


 その中でも部屋の中央奥、一番上座に座る者が声を上げる。


「どうなっていますの!そこの貴方!5番隊から連絡はありまして!?」


「いえ!未だ連絡はありません!同じく3,4番隊からも未だ敵側を食い止めたと言う連絡はありません!」


 司令官の女は持っていた扇子の先端をかじりながらイライラとした様子を見せ黙り込む。

 そんな司令官の様子に、部屋の中にいる者達は八つ当たりをされてはたまらないと、目を合わさない様にして自分の仕事に集中しているフリをする。


「どいつもこいつも使えませんわね!あいつも動きませんし・・・どうなってますの!?」


 イライラが頂点に達し、目についた1人の男に対して持っていた扇子を向けた瞬間、横にいた騎士風の恰好をした人物が司令官へと忠告する。


「お嬢様、落ち着いてくださいませ。まだ戦況は五分、ココからでございます」


「解ってますわよ!」


 騎士風の恰好をした人物に気勢を削がれたのか、司令官は扇子を片手へと打ち付けながら叫ぶ。


「はぁ~もう!どこかに使える者はおりませんの!?」


 司令官がそう言った直ぐ、タイミングでも見計らったかのように部屋へと入って来た者達が居た。

 入って来た3人の女性は司令官の前へと進み、そこで跪く。


「「「何処かここは我らにお任せを!」」」


「ふぅん?貴女達にねぇ・・・?」


「「「はい!」」」


 司令官は何か考える様に3人を見た後、ニッコリと笑顔になった。


「いいですわ、やってごらんなさい」


「「「ありがとうございます!」」」


「上手く行けばそれでよし、駄目だった場合は・・・そうですわね、まぁお楽しみといった所かしら?」


「「「・・・」」」


「オーッホッホ!さぁお行きなさい!上手く行くように頑張る事ね!」


「「「はい」」」


 3人が足早に部屋を出ていくのを見送ると、司令官の口からは笑い声が漏れる。

 3人の行先は一番激しい戦場になっている場所、そこに行って無事に帰ってこれる確率は低いのだが、司令官はそれを知っているにもかかわらず笑い続けていた。


「オーッホッホッホ!そこの参謀官、あの3人が行った所の人員を削って他へ回しなさい!」


「よ・・・よろしいのですか?」


「いいですわ、やりなさい!」


「はっ!」


 司令官は未だにクックックっと小さく笑いつつ、愉快そうに戦場の地図を眺めた。


「これで少しはましになりますわね。後はこことここをどうにかすれば・・・」


「お嬢様」


 司令官の横に佇む騎士風の人物は、表情こそ変わらなかったが不思議そうな顔をして尋ねた。


「なんですの?」


「あの者達に任せても大丈夫なのですか?とてもそのような実力があるとは思えませんでしたが・・・」


「ああ、そのことですのね、問題ないですわ」


 司令官はニタリと笑いながら口を開き、まるで褒めてくれと言わんばかりの口調で話す。


「あの3人には魔道具で仕掛けがしてあるのですわ。ドカーンと派手に爆発する奴がね。だからあの3人が勝っても負けても私的には勝ちになるのですわ」


「成程・・・流石でございます」


「オーッホッホッホ!私、自分の天才的な戦略が怖いですわ!オーッホッホッホ!」


 七色の髪と瞳を持つ女、マシェリー・フォン・オーウェルスはそう言って笑い、指令室にて吉報を待った。


 その後・・・1時間程経った時、指令室には戦場にて大爆発が起こったと報告が入った。


 それぞれ内部にキーとなる人物を内包した魔王と魔王による闘争は中盤戦へと突入する。



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 マシェリーより:お読みいただきありがとうございますわ。 

 「面白い」「続きが読みたい」「ノワール万能説」等思ったら、☆で高評価や♡で応援してくだされば幸いですわ。

 ☆や♡がもらえると ノワールが一晩でやってくれますわ。


 マシェリーの一口メモ

 【ロマンスにはチェスやトランプ、リバーシといった娯楽は存在しています。ミニゲームでそれらが遊べたりもできるんですのよ?】

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