第11話 お姉様?と愛?

 オーウェルス家の庭園にて開かれているお茶会ですが、現在少し空気がおかしくなっていますわ。


 それというのも・・・


「マシェリーお姉様、このお菓子おいしいですよ?はい、あーん」


「あ・・・あーん」


「「「「・・・」」」」


 それというのも、原因は私の傍にぴったりとくっ付いているマルドール家の令嬢サマンサにあります。


「どうですマシェリーお姉様?」


「え・・・ええ、美味しいですわ」


「あはっ!よかった!」


 サマンサは私の答えを聞くとご満悦そうに笑ってニコニコしていました。その顔は少し前までの世界が終わったかのような表情とは真逆です。


(笑顔なのはいいですわ・・・ですけど、どうしてこうなった!ですわ!)


 本日のお茶会に現れた時は、推しのギルバートのスキャンダルを知って落ち込んでいたのだが、その後何故かこういう状態になってしまいました。

 確かにちょっといい話みたいな事は話させてもらいましたが、それで何故このような事に・・・。


 私は頭を悩ませ考えましたが、さっぱり答えは解りませんでしたので、本人へと尋ねてみる事にします。


 すると彼女曰く


「愛です!」


 との事。

 どうも私に抱きしめられながら話を聞いていると愛を感じたそうです。


(うん・・・さっぱり解りませんわ)


 私には解りませんが、彼女は愛を感じたのでしょうか・・・?


(少し前に愛について語っておいて何ですが・・・愛って難しすぎて解りませんわ!?)


 私はぴったりと横にくっ付くサマンサを感じながら、つい遠くを見つめてしまいました。

 そこには青い空が広がり、ミカ姉様の顔が浮かび・・・えぇ!?何故にミカ姉様の顔が!?


『玲ちゃん、愛は考えるんじゃないの、感じるのよ』


 そんな事を私に語り掛けてきました。


 ・

 ・

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 と、少しおかしな事になりつつもお茶会は進み、最後は程よい雰囲気にはなりました。


「あら、もうこんな時間ですのね。今日はこの辺りにしておきましょうか」


 マルシアからは赤の魔王様の話、シーラからは騎士団長様や騎士団の話を聞いたりしている内に時間が経ち、持っていた懐中時計をチラリと見た時にはイイ時間になっていました。


「本当ですね・・・まだ赤の魔王様について話したかったのに・・・」


「うふふ・・・私も騎士団長様についてまだ語りたかったです・・・」


 マルシアとシーラはまだ推しについて語りたがっていましたが、また次のお茶会で語りましょうと諭すと、「はい!」ととてもいい返事をもらいました。

 私もこういう雰囲気でなら、お話をしながらお茶を飲むのは楽しくめていいと思い、次のお茶会が楽しみですわ~と思っていたのですが、そう言えばサマンサが返事をしていないと気づき横をみると・・・


(ひょぇ・・・!)


 声は上げずに済みましたが、サマンサの穴が開くほどにジッと見つめてくる視線に驚いてしまいました。

 どうやら私の事を集中して見ているせいで声が聞こえていなかったみたいです。


「サ・・・サマンサ様?今日はこの辺りでお茶会を締めようと思うのですが・・・?」


「あ・・・そうですか・・・」


 サマンサはもうお茶会が終わりだと聞くと、シュンとした表情になりとても残念がっていましたが、私としてはちょっと心を整理したいので一旦お別れしたいのですわ・・・。

 しかしサマンサの表情があまりに寂しそうだったので・・・


「また直ぐに会えますわサマンサ様」


 と、声を掛けました。するとサマンサはパッと満面の表情に変わり、私の手を取ってきました。


「はい!マシェリーお姉様!あ・・・私の事はどうかサマンサと御呼びください」


「え・・・ええ、解りましたわサマンサ」



 最後にこのようなやり取りがあったものの、次はまた3日後にお茶会を開くことにして解散となりました。


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 私は夕食が終わり部屋に戻ると、椅子に座りながら今日のお茶会の事を思い返しました。


「ふぅ・・・サマンサの様子はどうしたものかしら・・・」


 その中でもやはり一番に思い出されたのはサマンサの事です。あんな状態になってしまうとは予想外でした・・・。


 私が頭を悩ませて唸っていると、すぐ傍で控えていたノワールが少し楽しそうな声で言います。


「しかしお嬢様も満更ではなさそうな顔をしておりました。懐かれて嬉しかったのでは?」


「まぁ・・・確かに嬉しくなくはないですわ」


 サマンサの外見は美少女ですし、言動も最初に比べたら良くなったので、懐かれて嬉しくはあります。

 しかし今はまだ戸惑いのが大きくて、素直に喜べないのですわ。


「成程・・・可愛らしいサマンサ様に急に迫られたので、戸惑っていらっしゃるのですか」


「な・・・!?ノワールは心を読めまして!?」


 まさかノワールはエスパーと言う設定も!?と、私は心底驚いたのですが、ノワールはそれを否定しました。


「いえ、ただお嬢様の様子から察しただけでございます」


「そ・・・そうですの。でもよく解りましたわね」


「当然です、お嬢様の事はよく見ておりますから。これも推し活というモノなのでしょうか?」


「う・・・う~ん?どうでしょう?難しい所ですわね?」


(それはただの観察術なのでは・・・?・・・というか)


 私はノワールの話で聞き捨てならない言葉が聞こえたので尋ねます。


「ノワールは私を推しているんですの・・・?」


「勿論でございます。私にとってお嬢様は唯一無二、全てを捧げたいと思うお方で御座います。・・・これも愛という事でございましょうか?」


(ぴょぇっ!?)


 ノワールが私の目を見つめながら言ってきたのですが、その瞳から感じられた熱い想いに、私の心は驚きと混乱で一杯になります。

 その私の様子を見てまた察したのか、直ぐにポットからお茶をカップに注ぎ渡してくれました。


 私は渡された少し温めのお茶をチビチビと飲み心を落ち着かせると、ノワールに一言言わなければ気が済まなかったので言います。


「い・・・いきなり何を言いますの!?驚いてしまいましたわ!」


「申し訳ありません・・・」


 ノワールは謝った後に、「以前も同じような事を言った時は無反応だったのに、何故?」と不思議そうに呟いていましたが、そんな事が?

 気になったので転生前のマシェリーの記憶を探ると、確かに言われたような記憶があります。


「ご・・・ごほんっ!まぁ・・・私も色々成長しているのですわ!そこも察してほしかったですわ!」


「申し訳ありませんお嬢様・・・」


「そ・・・そんなに落ち込むことはありませんわよ?」


 誤魔化すために適当に言った言葉が、何故かノワールにクリティカルヒットしてしまったので慌ててフォローを入れます。・・・難しい性格ですわねノワール。


 しかし何故ここまでノワールは私を慕うのでしょうか。ゲームにおいても、何故かどのルートでも最後まで一緒にいますし、その理由も明らかにされていませんでした。

 故にそれは、ロマンス界における10大ミステリーの1つとされてきましたが(私が勝手に作った物ですが)、今こそその謎を解くべきなのでは?


「ノワール、1つ聞きたいことがあるのですがよろしくて?」


「何でございましょう?」


 意外と直ぐに立ち直っていたノワールは、何でも聞いてくださいと言うような顔をしていたので遠慮なく尋ねてみます。


「何故ノワールはそこまで私を慕うのです?私には特別何かをした覚えがないのですわ?」


 実は以前にも考えたことはあったのです。しかし自分ましぇりーの記憶を探っても、ノワールに対して特別何かをしたという記憶は出てきませんでした。

 なので今の流れで聞いて見ようと思ったのですが・・・


「・・・申し訳ありません。秘密で御座います」


 何故か答えるのを拒否されてしまいました。


 私はこれに大きな衝撃を受けました。だって・・・


「言えるじゃありませんか・・・」


 ノワールが私に対してNO!と言ってきたのですから。

 勿論これまでにも否定的な意見は言われたことがありますが、それは否定をしないと私の不利益になるからと言う事からの物でした。

 しかし今回は話したところで不利益になりそうもないのにNOと言ってきたのです。これは喜ばしい事ですわ!


「申し訳ありません、言えない訳ではないのですが・・・これは・・・」


「いえ!いいのです!」


 私はノワールの言葉に被せる様に喋り、ノワールの言葉を遮りました。


「私も無理に言わせたいわけではないのです。唯、少しの興味から聞いた事なので言いたくなければそれでよいのですわ。それに私は嬉しいですわ!」


「嬉しい・・・ですか?」


「ええ!ノワールは今まで私に対して肯定しかしなかったですから!そういう風に我儘・・・今回のは少し違いますが、とにかく!我儘を言ってくれて嬉しいのですわ!何故なら・・・その方がよりノワールを近く感じられますもの!」


「お・・・お嬢様・・・!お嬢様ぁぁぁあああ!」


 ノワールは言われたことが無い言葉に感極まったのか、私に飛びついてきました。といっても、それはふんわりとした感じで、私の小さな体でも受け止められる衝撃でした。


「おっ・・・っと・・・ふふ・・・よろしくてよ」


「お嬢様ぁ・・・」


 ノワールは普段見たことのないような姿で私に甘えていましたが、偶には良いと思いますわ・・・誰にでもそういう時間は必要ですもの。


 2人しかいない空間で、私はノワールの頭を優しく撫で甘やかします。

 するとノワールは私をチラリと見て何か言いたそうにしていました。


「何ですのノワール?」


 私が聞いてもノワールはもじもじとして中々喋り出そうとしません。


 私は全てを受け入れるつもりで、もう一度優しくノワールに囁きます。


「言ってごらんなさい?」


「お・・・お嬢様ぁ・・・あのですね・・・」


「なんですの?」



「そ・・・その・・・



          お姉様と御呼びしても・・・?」


「それは駄目ですわ」



 何でも受け入れると言いましたが、駄目な事もありますのよ?



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 マシェリーより:お読みいただきありがとうございますわ。

 「面白い」「続きが読みたい」「タワー?」等思ったら、☆で高評価や♡で応援してくだされば幸いですわ。

 ☆や♡がもらえると 塔が、建ちましたわ?


 マシェリーの一口メモ

 【ロマンス10大ミステリーは私の転生前の早乙女玲と知り合いが勝手に作った物ですわ。なので本編には出てこない可能性が大ですの。因みに、前回に引き続き、何故最後がああなったのかは不思議で、作者の10大ミステリーの1つになりそうですわ。】

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