第5話

「さて、朝ごはんも食べたことだし始めますか!」


「がんばれー。」


あれから素早く朝ごはんを食べ、後片付けを済ませたメリアは長い髪を後ろで結びポニーテールのような髪型にして袖をまくり臨戦態勢をとっていた。


そして俺はというと寝癖を放置しパジャマ姿のままソファに腰かけてメリアを応援している。決してまだ眠いからではなく魔法が使えないからである。


「もー、後で内装の手伝いはしてもらうからね?」


「はぁい。」


「はあ、ほんとにわかったー??」


メリアはルーの朝の弱さに少しあきれたようにわざとらしくため息をして見せるが頼られることに単純にうれしさも感じていた。


「よし、じゃあいきまーす!!」


メリアは一度深呼吸をすると目を閉じて両手を胸の前に突き出した。


「”トランスフォーム”!!」


彼女が呪文を唱えると、両手の前に紫紺色の小さな魔法陣が現れそれと同じ色の大きな一つの魔法陣が家の下に現れた。すると彼女の周りが光に染まっていく。その光は次第に広がり家全体を飲み込んだ。


「綺麗だなぁ...。」


ルーはそんなメリアの魔法に感嘆の声を漏らす。彼女の方を見ると彼女は目をつむり何かを考えている様子だった。


「まあ、こんな感じでいっか。」


メリアは一息つくと目を開ける。それから両手を下ろして魔法を解いた。


すると魔法陣は消え、辺りを覆っていた光も粒子となって消えていった。


「今の魔法、すっごく綺麗だった!」


メリアの魔法を前にいつのまにか眠気も覚めていたルーは目を輝かせながらこちらに向き直ってしたり顔のルーを見る。


「へへーん、だって僕は最強の魔女だもん!これぐらいできて当たり前だよー。」


メリアは少し恥ずかしそうに、けれど嬉しそうに頬をポリポリとかく。


「もっと自慢してもいいと思うよ?」


ルーはまだまだほめ足りない様子でメリアを見ていた。


「そ、それより!ほら見てよ!!」


ルーのきらきらした眼差しに耐えきれなくなったメリアは顔を真っ赤にしながら自分の後ろの方、元はベッドなどが置いてあった位置を指さす。


「そんな恥ずかしがらなくても...って、なにこれ...」


ルーはメリアの恥ずかしがる姿に苦笑いしながら彼女の指さす方へと視線を向ける。


そこには新しい壁を隔てて二つの部屋があった。


左の部屋には”メリアの部屋”と書かれた立てかけがあり右の部屋には”ルーのへや”と書かれた立てかけがかけてある。


「魔法ってほんとすごいなあ...。」


「ふふ、すごいでしょ?内装はまだ何もないから少し寂しいけどきっと良い家になると思うの。」


メリアは褒められてご満悦の様子である。


それから、二人してここにあれを置こうなどと話しているとルーがあることに気づいてしまった。


「メリアー。ここの立てかけに書いてある”ルーのへや”ってわざと”部屋”って文字じゃなくしたの??」


ルーはメリアの方を見る。


そこには顔を真っ赤にして頬を膨らませたメリアの姿があった。


「ち、違うもん。間違えたんじゃないもん。」


そう言ってメリアはプイっと他所を向いてしまった。


「あ、あははは...い、良い家になりそうだなぁ...。」


ルーはこの日、終始メリアのご機嫌取りに奔走することとなった。

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