21 オーク集落を虐殺
前回助けた冒険者
その傍に、俺1人で降りた。
「こんにちは」
友好的な挨拶は、人間関係の基本。
俺が優男風の笑顔を浮かべて挨拶すれば、冒険者たちは息も絶え絶えといった顔をしていた。
オークに追いかけられて全力疾走していたから、その疲れが出たのだろう。
体力が足りてないな。
「た、助かったよ。あんたたち、凄い魔法を使うんだな」
「まあ、そうだな。と言っても、ほとんど見習い2人がやったが」
「み、見習い?あれでか!?」
冒険者の1人が、オークの死体を指さす。
ライフルの銃弾を体に浴びまくって、かなり酷いことになっている。
「見習いだから、御覧の通り酷い有様だな。
俺やチビ助だと、1発で頭を吹き飛ばして終わるのに」
レインくんたちは、体に何発も撃ち込んで倒しているので、オークの体は銃弾でズタボロになっていた。
とはいえ、2人は訓練を始めたばかりの素人だから仕方ない。
「そ、そうなのか……すげえな」
「?」
冒険者が何に感心しているのか、よく分からない。
ま、いっか。
「だが、あんたたちが凄い魔法使いでも、この場所からは逃げた方がいい」
「どうしてだ?」
さて、レインくんたちの話題はここまでで、冒険者は再び焦った様子を見せる。
「オークだが、俺たちを追ってきた奴だけじゃない。
森の奥に集落を見つけた。正確な数は確認できなかったが、最低でも30体はいた。おそらく、もっといるはずだ」
「ふーん」
「俺たちは、急いで街に知らせに行く。
あんたたちも、できるだけ早く街に戻った方がいいぞ」
「そうか、分かった」
冒険者はそれだけ言うと、PTの仲間たちと共に、再び街目指して走って行った。
その後ろ姿を見ながら、俺は空中に浮かび上がって、待機していたチビ助たちの所に戻る。
「どうだった?」
そう聞いてくるのはチビ助。
「森にオークの集落があるそうだ。数は最低で30。ただし、もっと多いようだ」
「ふむ、そうか」
冒険者たちは焦っていたが、俺たちにとっては危険を感じる数じゃない。
「30体以上のオークの集落なんて、村どころか街でも危険な数です。
冒険者を含めて、街の戦力が総出で防衛しないといけないレベルです」
「今すぐ、街に戻った方がいいですよ、師匠、リゼ先生!」
レインくんとレイナちゃんは、この時代における常識を俺たちに教えてくれる。
ただ、この時代は俺たちのいた時代に比べて、恐ろしく文明が衰退している。
武器や防具は、ほとんどが中世レベルで、剣や槍、斧を使って近接戦をし、遠距離武器も弓矢などが主体だ。
そんなレベルの武器では、確かにオークの集団は脅威だろう。
だが、戦略魔導歩兵の前では、まったく話にならない。
「潰すか」
「そうだな、面倒な豚など消し去ってしまえばいい」
特に危険を感じないので、俺とチビ助はこのままオークの集落に向かうことにした。
「相手はオークですよ!それも何十体もいるんですよ」
「そうだな。そして空にいる俺たちを攻撃できない、ただの動く的だ」
レインくんは慌てているが、俺にとってもチビ助にとっても、まったく脅威でない。
と言うわけで、俺たちは空を飛びながら、オーク集落を目指した。
もちろん、レインくんとレイナちゃんも同伴。
「2人は見学してればいいから」
空の上にいれば、万一もないだろう。
俺とチビ助で、ちょっとした戦闘の実演を見せることにした。
そうして、オークの集落の上空に到着した。
地上でブーブー鳴いているオークたちは、空にいる俺たちに全く気付いていない。
「全部殺す?」
「当たり前だ。あんな連中でも、一般人にとっては脅威になるからな」
「了解」
俺とチビ助の2人で短い打ち合わせをし、戦闘に入った。
上空から高速でオークの集落の上を飛ぶ。
「火炎弾を発射!」
「火炎弾を発射!」
俺とチビ助は、最初にオーク集落の周辺に広がる森に向かって、魔導ライフルの弾種の一つである、火炎弾を使用する。
発射された火炎弾が森の木に命中すれば、そこから炎が上がって、急激に勢いを強めていく。
燃える勢いは、ただ木が燃えているレベルで済まず、あっという間に周辺の木々を巻き込んで、巨大な火災へ膨れ上がる。
火炎弾は、魔力反応によって炎を発生させる銃弾で、銃弾に込められた魔力を燃焼材料にして、弾丸に込められた魔力が絶えるまで、周囲を延々と燃やし続ける。
燃料が魔力であるため、水をかけても炎が消えることはない。
むしろ、炎が余計に勢いを増す。
そんな火炎弾を、集落の周囲に次々に発射していき、オークたちを炎の中に閉じ込めた。
集落全体が炎の壁に囲まれ、オークの逃げ場がなくなる。
「ブモオオーーーッ!!!」
オークたちは相変わらず間抜けな声を上げているが、自分たちが危険な状況に陥ったことは理解できたらしい。
オークの中でも、指導者格にある個体なのか、そいつが全体を代表して何やら指示を出している。
「敵の指揮官と思しき個体を射殺」
そんな指揮官オークだが、チビ助が狙撃して頭を吹き飛ばした。
「俺は敵の密集地帯を爆破」
俺の方は爆裂弾を用いて、オークを5、6体一度に吹き飛ばす。
オークの巨大な体が、爆発に吹き飛ばされて空中を舞うが、そんなものは気にせず、次々にライフルを撃って、オークを爆殺していく。
この間、俺もチビ助も空中に制止することなく、常に高速で移動しながら攻撃だ。
オークたちは、周りに広がる炎と、次々に起きる爆発。
そして気が付けば仲間の頭が次々に吹き飛んでいく光景に、ただただ恐怖して泣き叫ぶだけ。
空中にいる俺たちを見つけられていない。
この危険的状況から脱しようと、炎の壁を突破して、外へ逃れようとする個体もいた。
「ブモオオオーッ!」
だが、火炎弾の作り出す炎は強力で、オークの体は瞬く間に炎に焼かれて消し炭になる。
「いいか、これが戦争のために造られた魔導ライフルの威力だ。
その目にしかと刻み付けておくがいい」
戦闘時間は30分もなかった。
オークは全滅し、一方的な虐殺で終わった。
この光景を見せつけた後で、チビ助がレインくんたちに言った。
「なんて惨い……」
「酷い、こんなことをするなんて……」
だけど、レインくんたちの感想がこれだ。
「寝言を言うな。戦争とはこういうものだ。
今日は見学で終わらせたが、貴様らもいずれやることだ!」
チビ助は、先生として2人を怒鳴った。
「そうだな。これくらいできなきゃダメだ。
まあ、やる前に2人が死んだら、やろうとしてもできないけどな」
俺もチビ助に習って、2人の師匠らしくそう言った。
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