第67話 フレンドリーファイア
「身内の攻撃で死にかけるのは予想も覚悟もしてないんだけど!?」
天井部分が崩壊した建物の瓦礫の山からアイギスが這い出してきた。
「でも、助かったでしょ?」
部外者の侵入を拒んでいた障壁ごと建物の天井部分を崩壊させた犯人であるサニーが悪びれずに言う。
「まあね。それで、どう始末をつけるつもり?」
衣服についた砂埃を払いながらサニーに歩み寄るアイギス。
建物崩壊の衝撃に紛れる形で助け出された彼女だが、そもそもの囚われていた原因は解決していない。
「後のことは私にお任せください。いえ、身内の問題は身内で片付けなくては」
そう言うとサニーを連れて来た……いや、サニーに連れて来られた狐耳の女性が一歩前に出た。
「誰この人?」
「見覚えある気がするけど知らない人」
「私、少しは有名だと思ってたんですけどね……」
空気を読まないアイギスとサニーのやり取りを聞いて項垂れる他ない狐耳の女であった。
「あー……おほん!叔父様!もうやめて下さい!あなたの計画はすべて瓦解しました!」
項垂れていた女が顔を上げ、瓦礫の山に向かって叫ぶ。
計画だけでなく建物も瓦解しているし、なんなら生き残っているかどうかも怪しい状況ではあるが、それでも声を上げるということはきっとその叔父様とやらの生存を確信しているからなのだろう。
その声に応えるように瓦礫の山から一人の男が姿を現した。
「小娘が……いつもいつも邪魔ばかりしおって、都合が良いから生かしておいてやったものを、一族が覇を唱える邪魔となるならば、我が悲願を妨げるならば、やはり殺すしか無いようだな」
男の頭にもやはり狐耳が生えており、話を聞くにどうやら女と血縁関係にあるらしい事が見て取れる。
もっとも、その関係性が良好とは言い難いが。
「やはり、こうなりますか……」
男から殺意を明確に向けられている事がわかっているにも関わらず、女には身構える様子も怯える様子も見受けられない。
ただ淡々とそこにあり続けるだけである、まるで傍観者のように。
「その様子だと貴様は既に見たのだろう?歴代随一とも呼ばれる狐の巫女よ」
「さあ、どうでしょうね?」
男に距離を詰められてなお、余裕を持った笑みを浮かべ続ける女。
行き過ぎた平常心が不気味に見える。
「なんだ?未来の見過ぎで頭でもおかしくなったか?」
「おかしくなったのはあなたの精神ですよ。あなたの野望とやらに付き合って一体どれだけの領民が笑って暮らせるというのです?」
「言わせておけば……まあいい、殺してしまうか」
男の手が女の首を掴み吊り上げる。
「殺してしまって良いのですか?もう二度と私の能力には頼れませんよ?」
締め上げられた喉から苦しげな煽りが聞こえる。
おそらく以前は協力関係にあったのだろう、未来を見ることができれば成り上がることは格段に容易になる。
「やはり知らぬようだな、死を超越する秘宝は一つではなっ……」
一体いつから袂を分つ事になったのだろうか、自慢げな笑みを浮かべて女の首にかけた指に力を込めた瞬間、男がその場に崩れ落ちた。
一瞬の事だったのでよく分からなかったが、アイギスは確かにサニーが当身を入れる瞬間を見た。
「ギリギリまで待てって指示だから待ってたけど、大丈夫?」
気絶し白目を剥く男の両腕を縛りながら、サニーが言う。
「だ、大丈夫です。ちょっと息苦しいだけでしたので」
解放された女は首をさすりながらゆっくりと立ち上がる。
「これはどこへ持って行けばいい?」
気絶させた男を乱雑にガクガクと揺さぶりながらサニーが女に問う。
「然るべき場所へ。やった事のけじめはきちんとつけなければなりませんから」
そうして微笑む女はどこか寂しそうな空気を湛えていた。
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