いずれ空へと続く道

白銀スーニャ

1章 西の不死と死と過去

第1話 受胎告知を飛び越えて

「白銀 桐子、あなたのひ孫です」

「えっ?」

 一体何が起きたら彼氏より先にひ孫の顔を拝むことになるのか、私は頭を抱えた。


 現実において行かれた私のために少し状況を整理させてほしい。私、サニー・アージェント。独身、彼氏なし子供なし。

 仕事は……地方の治安維持というとわかりやすいでしょうか、最近は事件も少なくなり穏やかというよりは少々暇な日々を過ごしています。ここは事務所兼住宅、出張先の仮住まいみたいなものです。

 他にひとり同僚がいるのですが、パトロール……半分サボりですね、どうしてこういうときに限って出払っているのでしょう?

 そして肝心なときにいない同僚の代わりにいるのが、私のひ孫を名乗る少女。15歳位でしょうか?姪のアイギスと近いと思います。それにしても目の前の少女につながる手がかりが何もありません、完全に手詰まりです。


「思い当たるフシがなにもないからとりあえず知ってることを教えてくれる?」

「ごめんなさい、こちらがリーゼロッテさんからの手紙になります」

 少女が封筒を手渡してくる、できればそういうものは最初に渡してほしい。

 やはりリーゼロッテ……私の上司兼雇用主からの案件ですか、こういう奇妙でめんどくさい事件はだいたいあいつから回ってくる気がします。受け取った手紙に目を通すとそこには。


『サニーくん、私だ、リーゼロッテだ。ひ孫との感動的な出会いは果たせたかな?もしそうでない場合は何かしらのトラブルに遭遇していると思うので至急連絡をくれたまえ。ひとまず出逢えていると仮定して本題に入るとしよう。君にお願いしたいのはその子の保護と教育だ。ああ、心配はいらないよ。それはきちんと君のひ孫だ、なにしろ未来の私がそう言っていたからね。さて、連れてきた経緯だが魔法を暴発させてトラブルになった所を回収してきたらしい、ここまで読んで察して、あるいは既に気づいているかもしれないが無自覚の魔石持ちだ、実に厄介だね。そこでだ、君に依頼したいのは白銀 桐子の魔法使いとしての自覚と訓練そして身分を証明するものの取得、早い話その子が一人で生きていけるようにして欲しい。いまの業務の代わりの人員は既に手配しているから2~3日中に到着するはずだ、交代次第…いや、どうせ暇だろうから今から訓練に移ってしまっても構わないよ、君の裁量で自由に育ててくれたまえ。必要なものがあったら要望を、私の可能な範囲で協力しよう。―――みんな大好き愛され乙女のリーゼロッテより。』


 あのねリーゼロッテ、普通は愛され乙女を自称なんかしないの。

 色々と文句を言いたいところはありますが状況は把握しました。しばらくはいまの業務を離れてこの少女、白銀 桐子の面倒を見ればいいようです。


「改めまして、サニー・アージェントです。あなたの訓練を担当します、よろしく」

「白銀 桐子です、よろしくおねがいします」

 こうして、奇妙な関係の少女との生活が始まり……事務所のドアが開き、ちょうど同僚が帰ってきました。

「戻ったぞ―。お?珍しいな、客か?」

「ひ孫よ」

「はぁ!?」

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