第79話・外伝・先生の受難

 緊急職員会議

 いきなり理事長が全職員を呼び出した。


「さあ、皆さん、学園祭をやりますよ~~~」

 いきなり理事長が全職員の前でそう高らかに腕を上げて叫んだ。


 ・・・・・・・・


「「「は?」」」

 先生の声がはもる。


「何だ、その、は?というのは、学園祭だぞ、学園祭楽しいだろ絶対」

 一人上機嫌にふざけたことを抜かす理事長。


「お言葉ですが、理事長、この学園は魔物暴走という災害に見舞われ、そのほか細かい事件事故も大量に発生しております。そんな中学園祭というのは余りに無茶な話ではないでしょうか」

 少々保守的な先生が理事長にそう提言する。否、苦言をこぼす。


「いやもう、無駄だ。学園祭の開催は決定している。何故なら父上に相談した所、オッケーを貰えたからだ」

 凄い楽しそうにいう理事長。そして、胃を気にする先生方に何人かが悲しいうめき声をあげる。


「分かりました、上が許可を取ってしまったのならば、頑張って学園祭を開催しましょう。因みに理事長、予算案や計画案等はありますか?」


「ない、そんなものはお前らが考えろ。俺はただ学園ドラマでやってたような楽しい学園祭を体験できればそれでいい」

 ほとんどの先生は思った殺すぞクソガキと、そして胃腸薬買わないといけないなとも。


「分かりました、では、私達の方で考えます」


「うむ、そうしろ」

 偉そうに言うクソガキというか理事長、顔に青筋浮かべてる先生。


「でも、学園祭か面白そうだな」

 基本職員会議では発言しない北先生がそんなことを言った。


「お~~~、北先生もそう思うか」


「まあ、一応な、それに学園祭って考えてみれば、魔物暴走のせいで落ちてしまったこの学園の信用度を上げる良いチャンスじゃないか」

 珍しくまともなことを言う北先生。


「確かに、そうですね、でも、それは成功したらの話ですよ。もし、生徒たちの出し物が酷かったりしたら、もし学園祭中に犯罪者が侵入し一般人や生徒に被害が出たら、それこそ信用度がた落ちですよ」


「そんなの、犯罪者を出さなければいいってことだ。簡単だろ?何、俺が居ればどんな犯罪者が来ても大丈夫だ。それに、出し物の方も別に全部生徒にやらせなくたっていいじゃないか、普通にダンジョン連合の方で出し物を出せばいいだけだろ」

 北先生の言葉は的を得ていたし。北先生ならば、どんな犯罪者も捕まえれるという安心感があった。

 その結果、皆学園祭頑張るかという雰囲気になってしまった。


 そして、話はとんとん拍子に進んでいって。正式に学園祭を開催することが決定し、どのようにするかもある程度決まっていった。

 もちろん、その過程には、ダンジョン連合の出し物を出したらスペースが狭くなる問題や警備の数が圧倒的に足りてない問題などが起きたが。

 前者の方は北先生の空間魔法で解決。

 後者の方は裏ダンジョン連合とSクラスの上野・泰斗の眷族を借りるということで解決した。ただ、先生の中には警備の問題を一生徒の力で解決してしまうという自分達の無力さ問題と本当にその生徒を信用していいのか悩む先生が少なからずいた。


 ――――――――――


 そして、準備は各クラスともにスムーズに進んでいき、学園祭が一日目が始まった。

 最初1時間は特に問題なく進んでいった。

 まあ、一人釣り目の男スパイを逃したりしたのがその1時間で最も大きな問題だろう、といっても取り返しのつく、そこまで酷い問題ではなかった。しっかり追跡要員は出しているからな。

 そうやって、このまま、特に問題は起きないやろうと起きたとしてもこの戦力もとい警備だ。大丈夫だろと思っていたら、下位竜5000が上空に現れた。

 マジで意味が分からない、一般人と生徒は何らかの演出だと思っているが、そんなわけがない、もう、教師一同大慌て、ダンジョン連合も裏ダンジョン連合も大慌てで対策を取りに行こうとした瞬間、更なる恐怖が襲った。

 それは、漆黒の竜だった。

 それは、全てを飲み込む恐怖だった。

 それは、絶望だった。

 それは、自分がどれだけ集まっても勝てないと思わせる化け物であった。

 そして、一部を除いた一定以上の力を持つ者全てが走馬灯をみた。


 皆、死を覚悟した。

 この漆黒の竜によって死ぬんだと。

 こんな化け物に勝てるのはそこれそ超絶大英雄純武ぐらいだろう、英雄と名高い北先生でも多分この漆黒の竜の前では赤子の手をひねるように殺されるだろう。


 しかし、絶望は恐怖は訪れなかった。

 何故か漆黒の竜は下位竜5000に襲いかかり、それを蹴って殺し、噛んで殺し、ブレスで殺し、殺して殺して殺して、皆殺しにした後、どこかに消えてしまった。

 しかも、不思議なことに下位竜5000の死体も一緒に消えていた。


 訳が分からない。

 その一言に尽きる。しかし、一つ分かることがあるとすれば、自分達は助かったのだ。

 そんな、安堵もつかぬ間、ダンジョン連合上層部の娘(6歳)が攫われたとの報告が入った。もちろん護衛は付けていたが、漆黒の竜が出現して護衛達が恐怖に震えていた間に攫われたらしい。

 すぐさま救助班を作り、助けに行こうとしたが、Sクラスの筋鋼・鉄志という人が攫われてたところを助けたでござると言って、攫われた女の子を連れて来てくれた。


 その後も、犯罪者が現れて取り逃がしては、Sクラスの純武・勇気の手によって確保されたり。

 爆弾がばら撒かれて、Sクラスの上野・泰斗の眷族の力により全て排除されたり、またまた、自分達のミスで取り逃した犯人の始末を上野・泰斗に手伝ってもらったり。


 魔物を調教するスキルの持ち主が魔物を使ったサーカスをやっていたが、事故でその人が気絶して調教効果が解けて暴れ狂った魔物を、たまたまその場にいた筋鋼・鉄志に倒してもらったり。

 快楽殺人者が出て暴れ回ろうとしたときは、Sクラスの金山・怪奇が高笑いをあげながら逆に殺したり。

 何人か犯罪者を捕らえる過程で大怪我をしたがSクラスの白木さんに救ってもらったり。

 等々。


 様々な問題をSクラスに解決してもらった。

 もちろん、我ら教師陣にダンジョン連合、裏ダンジョン連合の力もあるが、今回、死者ゼロ、怪我人ゼロを達成できたのは100%Sクラスのおかげであった。

 もう、Sクラスに足向けて寝られないわ。本当に。でも最初は不安で一杯だったが、初日は上手くいったし、この調子で2日目も3日目も上手く行くと思っていたが。世の中そう上手くはいかない。


 裏ダンジョン連合の方で、異世界につながる門が見つかったとかで、大騒ぎ、更にそこから未知の魔物が溢れちゃって更に大騒ぎで、何とかその門を塞いだものの、余りの緊急事態の為、門の向こうの調査等の理由から、裏ダンジョン連合の精鋭部隊が東京にある本部に行ってしまい。

 更に更に、北海道の方で連続的な魔物暴走が起こったらしく、北先生が空間転移でそれの対処に行ってしまった。


 絶望がこまねいてる。というか死神がこまねいている。

 しかも、恐ろしいのが北先生が持っていた警備の全権を一生徒である上野・泰斗に渡したらしい。

 うん、良いね、素晴らしい、普通だったら、反対すべきなのだろうが、もう、それでいいと教師一同が思ったわ。

 だって裏ダンジョン連合の精鋭部隊と北先生が抜けたら、警備のほとんどが上野・泰斗の眷族だぞ。

 ハハハハハハ、笑えて来るよ、この学園祭の警備の全権を一生徒に渡して、それが一番いい判断だって、教師一同満場一致で決まったんだぜ。

 ハハハハハハ、ハハハハハハ、ハハハハハハ、この学校狂ってるわ。ついでに俺も狂ってるわ。今日一睡もしてないんだよ、昨日起こった大量の問題の報告書の処理で一睡もしてないんだよ。

 もう、俺は知らん、どうせ、警備の全権を持ってるのは上野・泰斗だ、何か問題があればソイツに責任をなすりつけてやる。ハハハハハハ。


 ――――――――――――――――――――

 2日目、死者ゼロ、怪我人ゼロで終わりました。

 上野・泰斗さん凄いです。本当に凄いです。自分教師ですけど、今度から上野・泰斗さんって呼ぶわ。

 そして、報告書の山が辛い。

 ――――――――――――――――――――

 3日目の朝。


「ハハハハハハハハハ、ハハハハハハ。ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ、終わったぞ、終わった、終わったぞ、俺はあの大量の報告書の山を終わらせたんだ、ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ、俺は寝る、今から学園祭最終日だけど寝る、問題なんて上野・泰斗さんが解決してくれる、今は睡眠こそが正義」


 ――――――――――――――――――――

 補足説明

 今回の一応の視点は、

「お言葉ですが、理事長、この学園は魔物暴走という災害に見舞われ、そのほか細かい事件事故も大量に発生しております。そんな中学園祭というのは余りに無茶な話ではないでしょうか」

 少々保守的な先生が理事長にそう提言する。

 って言った。少々保守的な先生目線でした。

 この先生の名前を出るかはわかりませんが、凄くいい先生です。安全が一番といって、自分の受け持つBクラスの生徒に生き残る術と安全の大切さを説いている先生です。

 生徒に親身になり、話をよく聞いてあげています。

 ただ、書類整理や報告書作りが得な為、よく北先生や北先生や北先生から押し付けられています。

 今回は大量の報告書に追われ深夜テンションになって少々おかしくなってしまいました。

 胃潰瘍によくなっており、その度に回復魔法の使い手に治して貰ってます。まだ、禿げてはいません。そうまだ。


―――――――――――――――――


その他様々な小説を書いてますので、よろしければそちらもどうぞ。

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