第59話・外伝・悪魔使い

 悪魔使い。


 それは、悪魔を使役または契約を結ぶ、もしくは悪魔をその身に宿し戦う者。

 それ故に世間一般からは嫌われ禁忌とされてきた。そんな悪魔使い達の元となるのはダンジョンが出現する遥か昔、飛鳥時代から存在していた。その時は陰陽師と名乗り様々な者に仕え、様々な怨霊を払い、人を癒し、知恵を出してきた。

 しかし、時の流れるにつれ、少しずつ陰陽師の才能は薄れて、段々と陰陽術を使えるものは減っていった。それを危惧した一人の陰陽師が西洋から来たとされる悪魔に頼り、陰陽師の力を復活させた。


 その後、悪魔は対価として生きた人間を1000要求してきたが、突っ張ねて、陰陽師全員で袋たたきにして無理やり従えさせた。それにより、陰陽師は調子に乗った。それはもう相当調子に乗った。従えた悪魔の力を使ってやりたい放題、金に女に権力に、好き放題しまくりやりまくった、しかし、それはとある陰陽師の裏切りにより崩れ去った。

 その、陰陽師の名は石嶋 零慈 悪魔の力を使い好き勝手する陰陽師達にあきれ返り、悪魔を自分の身体に無理やり封じ込めて逃走した。

 それにより、石嶋 零慈以外の陰陽師達は力が一切使えなくなり、滅びた。

 そして、自分の身体に悪魔を封じ込めた石嶋 零慈は狂った。

 悪魔の力というのは強大なものだ。

 それを人の身体に封じ込めるなんてのは出来ない、それなのに、無理やり封じ込めた影響で狂ってしまったのだ。

 しかし、石嶋 零慈は強靭な精神力を知恵を力を金を持っていた。(陰陽師から奪った金)

 彼は適当に女性を見繕い結婚して子供を産ませ、その子供に自分の身体に封じた悪魔の一部を移していった。

 それにより、彼は完璧に正気を取り戻し、自身とその子供を悪魔使いと名乗らせて育てていった。


 ――――――――――


 そして、月日は流れ、初代悪魔使いである石嶋 零慈は寿命で死にその子孫が悪魔を自身の身体に封じていった。

 そんなある日、石嶋 礼司という人が悪魔の力を研究して悪魔界から悪魔を連れ出して契約する術を生み出した。それにより、悪魔使いである石嶋家はより大きな力を手に入れた。

 そして、その力を生かし、様々な戦争や紛争、果ては人の洗脳や誘拐などを行い巨万の富と地位を築き上げた。だがしかし、世の中そう上手くはいかないものだ、その力は一瞬で崩れた。


 そう、ダンジョンの出現によって。

 ダンジョンが現れたその瞬間に封じ込めていた悪魔が活性化して、暴れ回り半数以上の悪魔使いが死んだ。

 生き残った者も、悪魔に体を蝕まれていたり、悪魔に体を乗っ取られていたりとほとんどが何らかの症状を負っていた。

 だがしかし、一人だけ、その身に宿る悪魔を完璧に制御して、抑え込んだ人がいた。

 その者の名は、石嶋 嶺二といった。皮肉なことに初代である石嶋 零慈がそういたように、彼もその後、石嶋家を見捨てて一人ダンジョンに潜った。

 そして、ひたすらダンジョンに潜って潜って潜って強くなった彼はもう一度石嶋家に戻り、正気を保っている者以外全てを殺し、当主となった。

 その後は、結婚して子宝にも恵まれ、ダンジョン攻略の功績が認められてダンジョン連合岡山県支部長に抜擢されて、少々苦労があるものの幸せに暮らしていけると思っていた。

 だが、しかし、現実はそう甘くない。


 ・・・・・・


 自分の息子が化け物だったのだ。


 ・・・・・・


 恐ろしいまでの悪魔使いとしての才能に人を人とも思わずにまるで虫を踏み潰すかのように殺し、気に入ったものをありとあらゆる手を使って自分の支配下に置かないと気が済まない異常なまでの支配欲。

 そんな自分の息子を恐れた石嶋 嶺二は自分の息子に封印を施して二重人格者にした。

 一つは化け物のような狂った人格、もう一つは礼儀正しく心優しい人格。(この状態の時は強さが落ちる)

 そのおかげで息子はしっかりとした人間となり、普通に学校に通い、普通に友達を作った。

 そして高校生になった息子を石嶋 嶺二は冒険者教育育成学校に入れた。


 だがしかし、石嶋 嶺二は気付いていなかった。


 息子がもう既に自分がかけた二重人格の封印を自力で解いて猫をかぶっていたことを。

 彼は気付いてなかった。息子が悪魔使いとしての力をその大きな才能を持って恐ろしいまでに昇華させて、悪魔のみならずに人までも自由に支配して自分の身体に宿す術を身に着けていることを。

 彼は気付いてなかった。自分の息子が冒険者教育育成学校に行った理由が優秀な人間(クラスメート)を見つけて支配することであると。


 そして、今、息子いや石嶋 零時は見つけた。たった一人でそこそこの難易度のダンジョンを無傷でそれも短時間で攻略できる力に戦闘狂で名高いあの金山 怪奇相手に勝つ能力に自分の身体に宿る悪魔が感じる強烈な強さと才能と大量の眷族の姿が。


 だから、彼は決めた、アイツをいや上野 泰斗を支配して自分のものにすると。


 そう心に誓ったのだ。

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