衝撃的映像

絶坊主

第1話

『1年の計は元旦にあり』


私は正月早々、やらかしてしまった。超ヘビー級なやつを。


それは、勤める会社の新年1発目のイベントでの事。


そのイベントはコロナの関係で2年行われていなかった。オミクロンが本格的になる前だったので、ギリやれた感はあった。


久しぶりのイベントも大成功に終わり、2年振りの打ち上げ。いつものメンバーで昼の1時から開始された。


2年間の鬱憤を晴らすかのように杯が進む。


「いや、ボク、何でもいいんすよ!」


ウチの会社の代表は酒にこだわりがあり、いろんな種類の酒をそろえてもてなしていた。


なので、注がれる酒の銘柄に気を使いながら皆さんお酌していた。


たまたま側にいたUさん(80代男性)。この方は大地主で会社のスポンサー的な方。


以前から顔見知りで、酒を酌み交わした事もあったけれど、じっくりお話した事はなかった。


袖振り合うも他生の縁じゃないけれど、Uさんと杯をあおりあっていて、何の酒がわからんよーになっての上記のセリフを私は言った。


するとワインに詳しいUさん。


「コブシさんに本当に美味いワイン飲ませないかんな~。今度、一緒に飲みに行きましょう!」


Uさんも上機嫌で、そう言った。


そんなUさんを・・・


私は・・・


やってしまった・・・


宴もたけなわとなり、代表が言った一言で、その惨劇は起こってしまった。


「え~それでは皆さんに一言ずつ、今年の抱負を喋って頂きましょう!」


もう、この時の私の記憶は・・・ない。


そして、惨劇は起こってしまった・・・




翌日。


まったく記憶が無くなっていた私。


昨日の自分の記憶の糸を辿る恐ろしい作業。


会社に行く。


「あ!コブシさん、昨日、大丈夫でした?」


代表が半笑いで私に言った。嫌な予感しかしなかった。


「コブシさん、昨日、トイレで倒れてて、ボクが送ったんですよ。」


私より一回り下の代表。


「いや~すいませんでした!」


「あ、そうそう!昨日の映像見ます?ボク、スマホで撮ってたんですよ。」


もうそんなん見たないけど、泥酔した自分がどんなんか気になって仕方なかった。


「終わり掛けの今年の抱負を話してもらったとこだけなんですけどね。」


再生・・・


今年の抱負を喋ってもらう場面。


代表「じゃあ、最初はUさん!お願いします!」


最長老であるUさんが立ち上がり、話し始めた。


「え~本日はですね。え~・・・あ~・・・」


ま、ま、まぁ、酔うてるし、歳も歳やし、時間かかってもしゃ~ない。


「なんと言うんですかね。え~・・・あ~・・・」


長い・・・


ちと長い・・・


見ながらそう思った瞬間。


向かいに座っていた男が立ち上がった。


私だ!


やめろよ!


余計な事すんなよ!


そんな私の願いも虚しく・・・





「前置きがなげーよっ!」


“よっ!”という言葉と共に、右手でUさんのデコを・・・




パシーーーン!




「あわわわわっ!」


また、Uさんが良いリアクションするんだこれが。


そこで皆の笑いが起きた。


もう、この証拠を突きつけられて気が遠くなりそうだった。


人生の大先輩であるUさんのデコを・・・


あれ以来、Uさんとはお会いしていない・・・というか、怖くて会えない。


「大丈夫じゃないですか?皆さん、笑ってたから。」


過剰に心配する私に代表は言ってくれた。


この1年、どうなることやら。

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