第228話 通信が入ったぞ

 総司との通話を切った俺は、改めて乱入者の方を見た。


「終わった?」

「‥‥ごめんなさい。止めようとしたのだけれど、そのまま押し込まれてしまって」


 全く反省していないシャーラと、目をそらす月子。扉の向こう側からは、リーシャがこちらを覗き込んでいる。


 どうせカナミもリビングで警備しながら、状況は見ているんだろう。


 シェアハウスが始まって数日。シャーラが俺の部屋に入り込んできた回数は数知れない。


 この攻防戦は、もはや訓練だ。


「はぁ‥‥」


 確実に月子とシャーラの声が聞こえただろう。今から言い訳を考えておかないと、俺は復帰と同時に嫉妬の暴徒と化した男子生徒にリンチにされるだろう。


 電話の向こう側から複数人の呼吸が聞こえたから、多分松田と陽向もいたしなあ。


 二人はともかく、変態の口の軽さは一級品だ。通気口よりも風通しがいいと評判である。


「今の、金剛よね。――大丈夫?」


 月子が聞いてきた。


 その大丈夫、にはいろいろと意味が込められている気がする。月子やシャーラといることがバレたことは大丈夫ではないが、三人は元気そうだった。


 俺と月子は年内は大学を休学することになった。


 人間の側にも敵がいると確定した以上、昼に敵襲があってもおかしくはない。


 そりゃ二人一緒に休学すれば、おかしいよね。


「ま、大丈夫だろ」


 くっつこうとするシャーラを押しのけながら、俺は言った。


「そうね、皆も見守ってくれているし、何かあったらすぐに連絡が入るから」

「それは本当に心強い限りだ」

「あんまり、眠れてないみたいだけど‥‥」

「それはごめん」


 大学は、今も対魔官たちが巡回してくれている。特に俺たちの交友関係は重点的に。いくら強くても、人手がないとできないことってたくさんあるから、本当にありがたい。


 また三人に会って馬鹿みたいに飲みたいものだ。


 そんなことを思っていたら、部屋の中に通知音が響いた。


「これって通信機の音か?」

「ええ。対魔官の中に敵がいるかもしれないからって、綾香が三条支部の特定の人物だけが使える通信機を用意してくれたのよ」


 月子は部屋を出ていき、通信機の方へと向かった。


 静かに待っていると、暫く話していた月子が通信を切り、何とも言えない顔でこちらを向いた。


「加賀見さんか? なんか重要な話か?」

「‥‥重要というか、今いち話が見えないのだけれど、とにかく勇輔に来てほしいって」


 俺に話か。元々俺も加賀見さんたちと話したいことはあったし、ちょうどいい機会かもしれない。あの人常に忙しそうだし。


 俺たちは揃って家を出て、三条支部に向かった。

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