武器専門店街へGO!

 ワークンで無事に作業着をゲットした私達。次は種族ごとに違う武器装備をそれぞれ調達することになりました。店を出てぞろぞろ歩くチーム勇者の後を、同じくぞろぞろ付いていく私達。

 ちなみに私はさっき買ったばかりの真っ赤なツナギを着てるんだけど、なかなか着心地いいじゃないこれ。生地はかなりしっかりしてるのに、通気性がすごくいいみたいね。


「武器装備かー。物騒だけど楽しみでござるなーうひひ」


 イッシーはだいぶ体調が回復したみたいで、もう自力で歩いてる。でも小脇には水の1.5リットルペットボトルを抱えてて。二日酔いに水分摂取が大事 なのはわかるけど、美少女エルフがペットボトル抱えてる絵面ってわりとシュールね。


「あのさあ、僕、昔 アーチェリーやってたんだよね。そういうのあるかなぁ」

「へえ、ユッキー意外だにゃ。でもその図体とパワーで弓はないっしょ。パワー系女子なら100tハンマー一択だにゃ!」

「えええっそっち!?」


 意外な過去をぽろりと口にしたユッキーだったけど、すかさずハタやんが突っ込んでて笑っちゃう。私はちょっと気になることがあって、相変わらず手を繋いで歩くアリスに声をかけた。


「ねえアリス。次も大きいお店に行くの?」

「ううん、武器装備選びで大切なのは、種類よりも特性だよ。だから種族ごとの専門店の方がいいものを見つけやすいんだー」


 アリスはスキップしながらニコニコしてる。赤いツインテールを揺らしながら私を見ると、身長差のせいで自然な上目遣いになるの。うーん、こうやって普通にしてれば、この子も可愛いんだけどね。っていうかアリスって年齢いくつなんだろ。考えたこともなかったな。見た目だと20代前半って感じだけど、こういうのって今の私おとこから聞くもんじゃないしねえ。

 全然関係ないことを考えてる私に、アリスは説明を続ける。


「あたしとトモッチは、身体の種族は違うよね。でも冒険者での『飛翔系』って意味では同じ。だからあたしが案内してあげるね!」

「あ、そういうことー」

「ちなみにね、うちのパーティーとトモッチのところは組み合わせが似てるからさ。それぞれペアになれると思うよ」

「えっ、誰とどこが似てるって?」

「んーほら、見てみなよ。もうペアができてるみたいだよ?」


 見ればガチムチ白虎ナイジェルの隣に黒豹ハタやんが並んで話してる。なんかハタやんが足元指さしてぴょんぴょん跳ねてるけど、一体何やってるんだろう?

 そのすぐ隣ではダークエルフのノエルをしゃがませて、イッシーが耳元でナイショ話をしてる。まったく一体なにを企んでいるのやら。しかもノエルったら、満更でもない様子でニコニコしちゃってるし。

 みんなからちょっと離れたところでは、ユッキーがトカゲ男ロイドに何か言われてるみたい。あ、ユッキーがメロンおっぱいを両手で隠すようにクロスした。内股で片足上げて「わぉ♪」……っておじい、もう飲んでるのか? 酔っ払いか??


「ほらトモッチ、あそこ! もう看板が見えてるよー!」


 アリスが指さした先を見ると大きなアーケードが見えた。半円アーチ型の看板にはでっかく『っぱ橋商店街』の文字。思わず目擦って二度見してたら、うちの連中はもう耐えきれなかったみたい。


「ぶふぉっ! 『冒険者をささえるプロの街』……ってこれまんま『かっぱ橋』にゃー」

「よりによって、て……ククッ」

「あはははは! こりゃ楽しくなってきたでござるなー!」

「♪まーっぱまっぱ、まっぱのマークのまーっぱず……ってこれは寿司かアハハ」


 私が思いつきで歌ったらもうダメだったみたいで、みんなしゃがみこんで悶えてる。私もケラケラ笑ってたけど、冷たい視線を感じて我に返った。


「……あー『まっぱ橋』の何がそんなに面白いんだ?」


 あっ冷たい。冷たいよその表情。白虎ナイジェルが冷たくも呆れた表情で私達を見下ろしてる。チーム勇者の他の面々も、なんで私達がウケまくってるのかわからないらしい。

 私達が落ち着くのを待ってくれてるけど、アリスだけはもう慣れたという体で、何事もなかったかのように手を上げた。


「はいみんなー! どんどらさんをそれぞれ案内してあげてねー!」

「お、おう。じゃあ昼どき目指して再集合ってことでいいか?」

「そうですねえ……あと2時間弱ってところですか。まあ妥当ですね」

「りょ! そしたらイッシーちゃんは俺と一緒に行くっすよー」


 ちなみにチーム勇者の足取りが妙に軽いのは理由があって。今日の昼食は、私達どんどらの奢りって事になってます、はい。休日潰して案内してくれるんだもん、そのくらいはしないとね。すると突然白虎ナイジェルがたくましい右腕を振り上げた。


「よーっし、これが終われば昼飲みだぞー!」

「「「おー!!!」」」


 ――いやちょっと待てナイジェル。メシを奢るとは言ったけど、飲みなんて許可した覚えはないのだが? しかもチーム勇者の連中、みんなノリノリでやんの。なんならうちのメンバーも一緒になって嬉しそうに手を上げて……っておーいこら! まったくもー仕方ないなー。


「今日の昼奢りは、ご飯と最初の一杯だけ! あとは自腹でよろしくね」

「「「えええー」」」

「えーじゃないよ全く。でもねー、今日買った装備を使っていっぱい儲けたら、お礼に夜の飲み放題を奢っちゃうかかもしれないぞ!?」

「きゃーうそ!? ほんとにー!?」

「うおおおおまじかああああ!!」

「トモッチさん太っ腹っすねぇぇ!」

「……悪くない条件ですね」


 ほーら乗ってきたねチーム勇者。ちょろいよ君たちちょろい。


「予算はうちのメンバーにもうそれぞれ渡してあるからね。それにきっちり収まるようによろしく。ここで選ぶ装備によって、任務の成果が決まるわけだからさ、しっかり案内頼むわよ」

「「「「ラジャー!」」」」


 うっわ。いつもグダグダしてるチーム勇者が、飲み放題を餌にしたらビシッと決まったよ。もしかして私らより飲兵衛偏差値高くない?

 いやー負けてらんないわ。うちらもちょっと気合い入れて、いい武器選ばないと! そしてみんなで飲み放題よー!

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