第4話


 「にしても、やベーな。これ。でも、この本を無くしたら、ただの村人だもんな。」


 それとも、この本を売りさばき、何億円、いや、何兆円という規模のお金を稼ぎ、それで生涯ウハウハ暮らしというのも悪くはない。


 「ん?んなぁ!……」


 村人の一人が、僕の方を見て驚愕した。


 「ど、どうなさいました!?」

 「い、いえ、な、何でも…ありません…」


 村人は、何かを隠すかのように目をそらし、何処かへ行ってしまった。


 何だ?気になるな…


 とはいえ、色んなこともあって非常に疲れていて眠い。色々と提供してくれそうなので、ご飯を食べて、ぐっすり眠ろう。


 ◆◆◆◆◆


 経験値の書を盗んだ忌々しき輩を探すため、ダウガロンは、懸命に捜索にあたった。だが、不運にも、途中でその様子を大天使マイムラーに見つかってしまうことに。


 「転生長ダウガロンよ。そなたは何ゆえ焦っておられる。それに、そなたの役目は新たに転生してくる生物に案内をすること。それゆえにそなたが「転生の間」にいなくてはならないのだ。」


 ダウガロンは彼を目の前にし、冷や汗が絶えなかった。「経験値の書 ∞」を盗まれたと言えば、彼は確実に激怒する。そして、ダウガロンを天使から追放するだけではなく、最悪の場合、世界を破壊リセットするかもしれない。


 「失礼しました…メウンコイツの翼を鈍らせないように、散歩をしていました。」


 とっさの嘘に、メウンは驚いたが、すぐに察した。


 「ふうん。そうか。ならば宜しい。そなたはすぐに「転生の間」に戻りなさい。メウンのことを思うことも大事だが、そなたには生物の生涯を扱う大切な役目があるのだ。」

 「ハ!申し訳ありません。すぐにそうさせていただきます。」


 そして、メウンはダウガロンを乗せて「転生の間」まで飛んでいった。


 その様子を見て、大天使マイムラーは呟いた。


 「あの様子…あの焦り…何かを隠しておるのは確実だ。それがよっぽどのことでは無いとよいが…」


 ◆◆◆◆◆


 豪華な食事、そしてお祭り、そして自然、そして寝床。色んなおもてなしにすっかり酔った俺は、とても気持ちが良かった。


 「ふぁ。良く寝れるぞ今日は。」


 そして、倒れるように寝床に横になり、早速イビキをかいて寝始めた。


グゴゴォ


グゴゴォ


グゴゴォ


 ガタンッ


 「うわ!?誰!?」


 いきなり、何かが落ちたような物音が聞こえた。目を覚まし、周りを見渡すと、村人が俺を囲っていて、皆、武器を持っていた。


 「な、何!?」

 「助けてもらって感謝はしている。別にあなたを殺すつもりはない。殺したくはない。だから、言う通りにしてくれ…」


 村長は、槍を顔に向けてきた。


 「本を差し出せ。その、あなたの懐に入った本だ。」


 それはつまり「経験値の書 ∞」だ。だが、これを受け渡すことは出来ない。


 「何故だ?何故本が欲しいのですか?」

 「見ての通りこの村は貧乏だ。あなたに差し出した食事やお祭りを行う際に使った資金、それらはこの村が一年過ごせる程の大金に等しかった。それほど危ない状態なのだ。だから、どうかその本を渡しなさい。その本を売れば、この村は栄え、何も困ることが無くなる。」


 情に訴えかけてくるような話し方だ。だが、これを差し出せば、俺はただの村人となり、楽しくない人生を送ることになるのだろう。これは、僕の前世の難病の引き換えのものだ。決して渡すわけには行かない…


 「すまないが、それは難しい。村の気持ちも分かるが…俺にも生活と言うものが」


 スパンッ


 次の瞬間、村長の持つ槍は俺の髪の毛を切り落とした。


 「ならば殺すしかない。周りを見ろ。お前は逃げることは不可能。そして、お前のようなが我々を魔法で殺すことも不可能。つまり、お前は詰んだのだよ。」


 「あなた」が「お前」に変わった。

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