第1話


 ピィーーーー


 俺の心電図は0になった。あぁ。母親が俺の手を強く握っていたが、その感覚は無くなった。

 弟の「お兄ちゃん!お兄ちゃん!」という声も、聞こえなくなってきた。


 あぁ。俺は死んだんだな。


 欲を言えば、もうちょっと生きたかった。だが、難病とやらがその欲を見事に消し去り、こうやって終末へと俺を連れていった。


 来世は、もっとイケメンになって、超金持ちで、スポーツや勉強も出来て、めっちゃくちゃモテる。なんて人生を送りたいものだ。


 ◆◆◆◆◆


 フカフカとした地面。あれ?病室か?だが?死んだはずだよな…


 目を明けると、そこは、全く知らない洞窟(?)であった。地面のフカフカは、洞窟には似合わない綺麗な装飾のベッドであった。


 あぁ。なんかこれ察せたな。転生とか言うやつかな。


 明らかにそうだもんな。こんな場所。それに、めちゃくちゃ体も元気そうだし。


 動くのもダルいっちゃダルいけど、久しぶりに歩ける。


 「よっと…」


 本来ならば、天使やらなんやらがいて、「お前は最強の何とかになる!」とか、逆に「お前は最弱の何とかになる!」とか言われるもんだけどな。まさかソロ転生(?)となるとは…


 トボトボと洞窟を歩いていると、明かりが見えた。


 外か?いや、どちらかと言うと、松明のような明るさだ。近付くと、案の定、壁に松明が置かれていた。


 「何かの部屋かな?もしかして、天使の部屋?」


 にしては、あまりにも質素、というか何というか。昔の狩人の住むような部屋である。


 「あ!本棚がある!」


 壁には、本棚が掘られていた。どれもこれも変な文字で読めない…と思いきや、何故か読める。日本語ではないのに、英語でもないのに、見たことないのに、何故か意味がわかる。


 「【経験値の書 ∞】か…これ、ヤバい奴なんじゃないかな…」


 普通の本とは違い、異色を放っていた。


 「立ち読みくらいなら…良いよな…」


 そして、その本を開いた。


 「何々…?えぇと…」


 本を読んでいくと、急に脳や神経が覚醒し始めた。


 な!何だこの感覚は!?凄い情報が入ってくる!


 覚醒のし過ぎで、体が黄色く光始めた。凄い!凄い!凄い!とにかく凄い!


 体がビンビンに覚醒したような感覚だ。もしかして、今のでレベルが上がったのか?


 ふと振り向くと、机があり、その上に、書類のようなものがあった。そして、そこには俺の写真があった。


 「もしかして、俺の転生関係の書類!?」


 その書類に書いていることを読み進めると、「転生」「村人」「能力なし」ということが書いていた。


 「要するに、俺は能力なしの村人に転生されたんだな。何か悲しいな。」


 だが、この本を持っていれば、俺、最強なんじゃないか?


 さっきまで「立ち読み」と言っていたが、この本を盗むことにした。

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