ソウルディスタンス

死隔

｢ダメだよ｣

｢どうして？｣

｢死ぬのはダメ｣

｢死んだっていいんじゃない？｣

｢だって、誰も知らないんでしょ？｣

｢死んだ後の先なんてさ｣

｢そうだけど、ダメだよ｣

｢どうして？｣

｢どうしてって…死んだら終わりだよ｣

｢また始まるかもしれないでしょ？｣

｢始まる？｣

｢そうだよ、始まるの｣

｢なにがだよ｣

｢新しい生がさ｣

｢ワケわかんないよ｣

｢分からなくていいよ｣

｢どうしても飛ぶの？｣

｢飛ぶよ。最期に鳥になるの｣

｢翼を失った鳥になる｣

｢……｣

｢ねぇ、今日は寒いね｣

｢……｣

｢これあげる。私にはもう要らないから｣

｢キミが居なくなったら、心が寒くなる｣

｢それじゃ暖められない？｣

｢当たり前じゃん｣

｢大丈夫だよ｣

｢貴方は、幸せになってね｣

｢待って｣

｢まだなにか？｣

｢キミがいくなら僕もいく｣

｢ダメだよ｣

｢どうして｣

｢キミはまだその時じゃないから｣

｢私は呼ばれてるからさ｣

｢いかなくちゃ｣

｢うん、分かってる｣

｢分かってるつもりだよ｣

｢もう、泣かないでよ｣

｢笑って見送るって言ったでしょ｣

｢ごめん｣

｢私は笑ってるよ｣

｢最期ぐらい笑顔でいたいの｣

｢だからキミにも笑って見送って欲しいな｣

｢ねぇ｣

｢どうしたの？｣

｢僕はどこから間違ってたんだろう｣

｢どうしたらキミを救えたんだろう｣

｢こんな風になる前に｣

｢キミは間違えてないよ｣

｢私、キミが好きでよかった｣

｢だったら｣

｢ううん、もういいの｣

｢決めた事だから｣

｢考え直してよ｣

｢好きになったらダメだったかな｣

｢そんな事は言ってない！｣

｢大切にしてあげなよ｣

｢キミも大切だよ｣

｢私は一番じゃないとダメみたいなの｣

｢でもキミからは奪えない｣

｢これ以上何も奪えない｣

｢私、今すごく幸せだよ｣

｢キミの顔を見れてるもん｣

｢雨模様だけど｣

｢週末の天気は雨かぁ｣

｢じゃあ、幸せにね｣

｢大好きだったよ｣

｢ありがとう｣

｢じゃあね｣