割れた記憶

黒木裕一

割れた記憶

手元にあったCDをかけた

キュルキュルキュルと鳴いて曲が始まる

スピーカーから聞こえる音は割れていて とても聴けるものじゃなかった


唐揚げにレモンをかけた

隣に座る僕はキュルキュルとお腹を鳴らした

唐揚げが盛られたお皿は割れていて 机の上に水たまりを作った。


扉に手をかけた

古びた金具はキュルキュルと鳴いた

真ん中のガラスは割れていて 雲一つない晴天がこちらを覗いていた


僕は掃除機をかけた

綺麗な床にどこか寂しさを覚えた

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割れた記憶 黒木裕一 @yuuichi_write

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