化け猫ほうむる
帆多 丁
1. 場違いな被り物
シュダパヒ大社殿の鐘の音ひびく頃、手に手に長い
街の至る所に立ち並ぶ
宵闇せまる大地にぽつぽつと光点が広がり、放射状に伸びる八本の大路と、それらを結ぶ八重の八角形が浮かび上がる。街の姿は、朝日に光るアカネグモの巣にも似ていた。
しかし蜘蛛の巣とは異なり、街は自ら輝く。
ここシュダパヒにおいて夜とは、闇によらず、光によって始まるものであった。
中でもひときわ輝く
その流れの中に、場違いな
東方諸国の美術や芸術が広く紹介されるようになったシュダパヒである。
人の出自も色とりどりのシュダパヒである。
異国情緒を取り入れたおしゃれも楽しむ
それでも、この大きな藁の円を知る者は少なかった。
円は遥か東方の国で編まれた古い
腰から上には使い込まれた麻の袖付きに、赤い刺繍の毛織りの胴衣。腰から下には紺染めの
その出で立ちを異国情緒と解釈しようとした通行人も、あれでは情緒が過ぎて異国そのものであると結論づけざるを得ない。
娘は足を止めて
まずは色。琥珀色の左目と、金色の右目。
そして形。ごくありふれたヒトの左目と、縦にすぼまる猫の右目。
周囲からの奇異の視線や戸惑いに構わず、彼女は盛大にくしゃみをした。
「ほあっ……じぶち!」
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