二股相手とその本性
「大智、長渕咲さんだっけ? 会ってみたいんだけどどこかで場を設けてくれないか?」
「いいけど……うーん」
「何でそこで渋るんだよ。アリバイ工作、協力してやってるんだからこれぐらいしていいだろ?」
「そうだな。ただし颯斗、咲ちゃんに惚れるなよ?」
俺には有栖先輩という想い人がいるんだ。
ただそれをわざわざ大智に伝える意味も意義もない。
こいつとはもう友達でも何でもないのだから。
◆◆◆
「初めまして〜。咲ちゃんです!」
容姿は有栖先輩には及ばないが、それなりに可愛い。
髪の色も綺麗にメッシュを入れていて悪くない。
だが、本能が何かを隠していると警告している気がする。
「初めまして。大智の友人の高田颯斗です」
「それで咲ちゃんに何の用かにゃ?」
「一旦用事は置いといて大智に席を外してもらいたいんだけど良いかな?」
「お、おう。いいけど咲ちゃんに変なことしたら許さないからな」
それだけ言うと大智は去っていった。
大地に席を外してもらった理由は簡単だ。
長渕咲は恐らく猫をかぶっている。
それもとてつもないものを。
それがさっきの警告の正体だ。
「さて長渕さんだっけ? そろそろ本音で話さない?」
「本音? あぁ、こっちの方がいいってことか」
「そうそう。長渕さんも猫かぶるの疲れるでしょ?」
「……男であーしの本性見抜いたのはあんたが初めてだ。誇っていいぞ」
「そうですか。正直そんなことはどうでもよくてですね。大智を誑かしたのはわざとかだけ、聞きたかったんですよ」
大智から二股宣言を聞いた時、それにキスの写真を見た時からおかしいと思っていた。
あいつの本性はクズだったが、元々奥手でキスなんてとてもじゃないができるような人間じゃない。
「へー、颯斗さんよく見えてるね」
「見えてる?」
「状況だよ。普通にだったらあんたが仲介してくっつけた奴が浮気したら怒り狂うだろ。なのに今のあんたは至って冷静だ」
「そういうことですか。こんなものは貴女の咲ちゃんと同じで猫を被ってるだけですよ」
「はは、それはそれは恐ろしい。それで何であれを誑かしたかって?」
「ええ。恐らく長渕さんはあり、失礼。小鳥ヶ丘先輩と大智が付き合ってあることを知っていましたよね?」
「さぁ? どうかにゃー? 咲ちゃん馬鹿だからわからない〜」
「そうですか。なら今はそれでいいです」
これ以上の話し合いは無駄だと思った俺はその場にお会計を置き、大地に帰る旨のメールを送り帰路に着く。
長渕咲は恐らく知っていて大智を誑かした。
今日の態度を見ている限り、大智が欲しかったというわけではなく有栖先輩と何かあったように見えた。
有栖先輩にもそれとなく、聞く必要がありそうだ。
—————
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